営業部全体の活動状況を把握するためには、一人ひとりの担当者が営業日報を作成し、報告する必要があります。そして、営業日報を適切に活用することで、営業活動の改善や成果の向上につながります。しかし、営業日報の目的や意義が共有されずに営業日報が形骸化していたり、担当者が営業日報を書くことを負担に感じていたりするケースは少なくありません。この記事では、営業日報の目的、書き方や例文を紹介するほか、書くときのポイントなどについても解説します。
営業日報とは、営業活動に関する報告書のこと
営業日報は、営業活動に関する日々の出来事や進捗状況、成果をまとめた報告書のことです。フォーマットは企業ごとに異なりますが、一般的には時系列でまとめた当日の状況を営業担当者が記録し、管理者やチームと情報を共有するために作成します。営業日報によって、その一日にどのような活動をしたのか振り返ることが可能です。営業日報の作成は、個人やチームの目標達成に向けて、今後どのように行動すべきかを考える上で大切な業務といえます。
営業日報を書く目的
営業日報を書く主な目的は、組織内での情報共有と成果向上をサポートすることです。営業日報は、報告を受ける側の管理者と、実際に日報を書く側の営業担当者とで目的が異なります。
管理者の目的:全体的な情報を把握するため
管理者にとって、担当者に営業日報を書かせる目的は、案件ごとの進捗状況や課題の把握、営業担当者全員のスキル確認など、全体的な情報を把握するためです。営業日報によって営業の進捗と成果を確認するとともに、顧客ニーズや課題を把握します。また、成績の良い担当者とそうでない担当者の違いを知るきっかけにもなり、トップセールスの活動内容を共有することで、チームに知見が蓄積されます。
営業担当者の目的:業務報告と活動の振り返りのため
営業担当者にとって営業日報を書く目的は、管理者に対する業務報告と1日の営業活動の振り返りを行うためです。日報として書き起こすことで自身の行動を客観的視点で冷静に振り返ることができ、課題や次に取るべきアクションが見えてきます。また記録として残るため、トラブル発生時の原因究明や引き継ぎなどの際にも有用な資料となります。
営業日報の書き方
営業日報は、その日の出来事をただ羅列すればいいというわけではありません。記録と報告、振り返りと情報共有のベースとなる書き方をする必要があります。ここでは、一般的な営業日報の書き方を紹介します。
1日の営業目標
営業日報には、まず1日の営業目標を書きます。営業日報は通常、業務の終わりに書くものですが、営業目標の項目だけは、できれば朝のうちに書いておくことをお勧めします。それは目標を意識して1日の営業活動を進められるからです。前日に、翌日の目標を定めている場合は内容を確認し、やるべきタスクの優先順位や数値を確かめて記載します。営業目標の例としては「展示会で名刺交換した企業50社に架電」「得意先30社にメールでイベント案内」のように、できるだけ具体的な数字で目標を設定します。なんとなく目標を決めるのではなく、チームのKPIや月次目標などから逆算して1日の目標に落とし込むことが大切です。
1日の業務内容とスケジュール
営業日報には、その日に実際に行った営業活動の内容と、実施時刻を記載します。箇条書きでもいいので、簡潔に要点を絞って書きます。固有名詞や具体的な数字を使い、定量的な報告となるように書くことが大切です。明確な報告をすることで、チーム内での情報共有が円滑に行われ、有効なフィードバックやアドバイスを得るきっかけとなります。また、自身の営業活動を正しく振り返ることにもつながり、目標達成に向けたPDCAサイクルを促進します。さらに、各業務のスケジュールを併せて記すことで、どの活動にどのくらい時間がかかったのかを把握することも可能です。
その日に得た成果
営業日報には、その日の営業活動によって得られた成果を記載します。ほかの項目と同じように、定量的で明確な表現で書くことが大切です。どのような目標を達成するために、どのような業務内容を行ったのか、そして、それがどのような成果につながったのか、一連の流れを日報で確認できるように書きます。その日に得た成果は、営業目標や業務内容にひもづくような成果の書き方をするのがポイントです。例えば、1件の契約を獲得したとき、それが、取引先へのプレゼンテーションによるものなのか、既存顧客へのフォローアップによるものなのかがわかるよう、業務内容とリンクさせて記載します。
振り返り
1日の営業活動を振り返り、気づいたことや反省点を営業日報に記載します。その日の成果が目標に届かなかったときは、なぜ届かなかったのかを分析し、次はどのようにすればいいのか対策を考えることが大切です。反省・分析・考察をすることで自身の成長につなげるだけでなく、管理者やチームメンバーへの共有を通して、提案やアドバイスをもらうことができます。良いアドバイスをもらうためにも、単なる感想ではなく、事実に基づいた分析と考察が重要です。
翌日の目標
その日の営業活動を踏まえて翌日の営業目標を設定し、営業日報に記載します。翌日の目標を明確にすることで、効率的で計画性のある営業活動を行う習慣が身につきます。やるべきタスクの優先順位、タイムマネジメントやリソースの配分など、さまざまなことを考慮しながら、目標を設定することが大切です。翌日の目標を設定することは、PDCAサイクルを回すための重要な役割を果たします。
営業日報の例文
こうした営業日報の書き方を踏まえて、営業日報の例文をご紹介します。あくまで一例ですので、アレンジして自社に合ったフォーマットを作成するようにしてください。
■営業日報の例
営業日報 | |
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20××年◯月◯日 所属:◯◯ 名前:◯◯ |
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【営業目標】 | ・A社との商談において、契約を獲得 ・B社へのヒアリングをもとに、プレゼン資料をB社向けにカスタマイズ ・既存クライアントへのフォローアップ ・展示会で獲得したリード(20件)に電話、アポイントを獲得する |
【業務内容とスケジュール】 | 09:00~09:30 朝のミーティングと目標確認、メール対応 09:30~11:00 既存クライアントへのフォロー(5件電話、7件メール) 11:00~12:30 新規リードへのアプローチ(20件電話) 12:30~14:00 昼食、移動 14:00~15:30 A社と商談 15:30~16:00 移動 16:00~17:30 B社向けプレゼンテーションの準備 17:30~18:00 営業活動の進捗入力とデータ更新 |
【成果】 | A社から契約獲得 既存クライアントへのフォローにてC社がアップグレードを検討 新規リードとのオンライン会議アポイント1件 |
【振り返り】 | A社と契約成立。初回アポイントから半年かかった。競合サービスと最後まで検討しており、最終的には「高い拡張性が決め手となった」とのこと。導入コストの低さよりも、付加価値の高い機能を訴求したことが功を奏した。顧客の事業フェーズを見極め、提案の方向性を定める重要性を実感した。既存クライアントのフォローで、C社がアップグレードを検討。来週にもオンラインで打ち合わせ予定(日程調整中)。 |
【翌日の目標】 | ・C社へのアップグレードプラン検討、資料作成 ・D社との定例ミーティング ・展示会で獲得した新規リードへのアプローチ |
営業日報を書くときのポイント
営業日報は、管理者やチームメンバーと情報を共有し、適切なフィードバックをもらったり、チームでの改善につなげたりするための重要なツールです。その日の出来事をただ書けばいいというわけではありません。営業活動改善と成果向上につながる、営業日報を書くときのポイントについて解説します。
事実と主観を分けて書く
営業日報を書く際には、事実と主観を分けて書くことがポイントです。特に事実と主観が混ざってしまいやすいのは「振り返り」の項目です。振り返りでは、まず事実を短文で書き、その後、事実に対する反省や考察を書くようにするのがお勧めです。前述の例文の振り返りを例に解説します。
■営業日報の例文(一部)
【振り返り】 | A社と契約成立。初回アポイントから半年かかった。競合サービスと最後まで検討しており、最終的には「高い拡張性が決め手となった」とのこと。 導入コストの低さよりも、付加価値の高い機能を訴求したことが功を奏した。 顧客の事業フェーズを見極め、提案の方向性を定める重要性を実感した。既存クライアントのフォローで、C社がアップグレードを検討。来週にもオンラインで打ち合わせ予定(日程調整中)。 |
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太字部分は事実です。それぞれ、契約が成立したことや、半年かかったことが述べられています。最後の「高い拡張性が決め手となった」は主観のようにも思えますが、A社サイドの発言であるため、事実と捉えられます。
それに対し、下線部分の「付加価値の高い機能を訴求したことが功を奏した」「提案の方向性を定める重要性を実感した」は、事実をもとにした書き手の考察(主観)です。それぞれが短文であること、事実を書き切った後に主観が書いてあることによって、事実と主観を見分けやすくなっています。
第三者が読みやすい書き方にする
管理者やチームメンバーなどの第三者が読んだとき、何度も読み返さなくても一度で理解できるよう、書き方を工夫することもポイントです。箇条書きや短文で要点を端的に記すと、パッと見ただけで内容をくみ取りやすい日報になります。反対に、心情や出来事の詳細を書いてしまうと、かえってわかりづらくなることがあります。
まずは結論を書き、必要だと判断したときだけ、経緯や原因といった周辺情報を記載することをお勧めします。その際は、「多くの企業が」「とても好評で」といった曖昧な表現ではなく、「100社を超える企業が」「満足度アンケートで平均8.5点」のように、事実に基づいた数字を使って、定量的で明確な書き方をすることが大切です。読み手によって解釈の幅が生じない書き方をすることが説得力をもたらします。また、日報が長くなる場合や、多岐にわたる内容が盛り込まれる場合には、見出しをつけたり改行を入れたりすることで、見た目にメリハリをつけると読みやすくなります。
PDCAを意識する
営業日報にも、PDCAを意識することが大切です。多くの企業で、営業日報のフォーマットはPDCAに沿ったものが採用されています。本記事の「営業日報の書き方」で紹介した項目も、「営業目標(Plan)、業務内容とスケジュール(Do)、成果(Check)、振り返り(Action)、翌日の目標(次のPlan)」となっており、PDCAを経て次のサイクルにつなげる仕組みが取られています。
日報を記入する際は、ただ漫然と項目を埋めていくのではなく、PDCAを意識しながら書き込んでいくことが大切です。毎日の日報作成でPDCAを意識することで、営業活動の改善と成果向上が促進されます。
顧客情報と関連づける
営業日報は、顧客とのやりとりの履歴です。ただの報告書として終わらせるのではなく、顧客情報と関連づけて保存することで、その後の関係の構築や維持、アプローチの改善に役立てられます。営業日報には、商談時に得た情報や反省点などが記されています。次の商談や、購入後のフォローなどにこれらの情報を活用することで、商談の確度向上や良好な関係構築につながります。
営業日報を書きやすくするには?
営業日報が重要だとわかっていても、つい「面倒だ」と感じて日報を書かなくなってしまう営業担当者がいます。そうならないよう、営業日報を書きやすくする方法について解説します。
入力作業を複雑にしない
何を書けばいいのかわからない、または、書式が複雑で入力に手間がかかるような営業日報は、作成に時間と労力がかかり、営業担当者の負担になってしまいます。必要な項目のみに絞り込み、シンプルで使いやすいフォーマットを導入することが大切です。
管理者が必ずフィードバックする
管理者からのフィードバックがないと、部下は営業日報を書く意義を感じにくくなってしまいます。日報がただの形式的な習慣になってしまうと、部下が日報を書くモチベーションを失ってしまうだけでなく、日報を適切に活用することで得られるはずの営業活動の改善や成果向上の機会も取りこぼしてしまうことにもつながります。週に1度でもいいので日報に対するフィードバックを行うことが大切です。管理者からの適切な評価とフィードバックは、部下の意欲の向上と成長を促します。
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営業日報を書くことで、営業部全体の動きが共有され、その後の営業戦略に活用することが可能になります。そのためにも、営業日報の内容は顧客情報とひもづけて管理することが重要です。
営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE(スカイピース)」は、すでに登録されている名刺データにひもづけて日々の営業活動を「活動記録」として登録し、社内で共有できます。これにより、顧客企業ごとの進捗管理がスムーズになり、売上につなげるためのさまざまな業務に生かすことが可能です。
さらに、営業担当者が自分の活動記録を絞り込んで確認し、営業活動の分析や今後の目標設定につなげることもできます。また、管理者の場合は、担当者ごとに絞り込んで活動記録をチェックし、適切なフィードバックに生かすことも容易です。
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