トップ営業の“技”の共有では属人化は解消されない!営業プロセスを標準化する地図のつくり方

営業活動の属人化解消のために、成果を上げている営業担当者のノウハウを共有しようとする企業は少なくありません。しかし、トップ営業の“技”だけを切り出しても、ほかの担当者が同じように実践できるとは限りません。 今回は、こうした属人化の課題に対し、営業プロセスを“地図”として可視化する「基軸営業プロセス」の考え方と、SFAを活用した運用のポイントについて、株式会社パーソル総合研究所の河村 亨 氏に伺いました。

株式会社パーソル総合研究所
ラーニング&ディベロップメント本部
L&Dコンサル部コンサルティング1グループ
シニアコンサルタント
河村 亨 氏
機械商社を経て富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソル総合研究所)に入社。教育の営業・営業マネジメントを経て「SFAの現場定着」「戦略実行」をテーマとした営業マネジメント力強化コンサルティングに従事。その後自社マーケティング部にてABM(Account Based Marketing)を構想・実践、現在に至る。著書に「自ら考え戦略的に動く営業集団をつくる3つのフレームワーク」「Sales Enablement アカウント型BtoB営業における営業力強化」、共著「訪問しない時代の営業力強化の教科書」など。
営業活動やSFAの活用にお困りではないですか?
- 営業活動が属人化しており、案件の進捗や顧客との関係が見えない
- SFAを導入したいが、何から始めればよいかわからない
- 名刺・顧客情報とSFAを別々のツールで管理していて手間がかかる
上記のようなお困りごとがありましたら、SFA機能を標準搭載した営業名刺管理サービス「SKYPCE(スカイピース)」をご検討ください。名刺を登録するいつもの作業から、見込み顧客のリード管理、案件管理、活動記録の共有までひとつのサービスで対応できます。名刺情報を基点に顧客とのやりとりを見える化することで、営業活動の属人化解消と効率化を支援します。
SKYPCEについて詳しく知りたい方はこちら
- SFA機能の詳細を知りたい
- まずは情報収集したい
- 実際の画面を試したい
見込み顧客の獲得から受注後フォローまで、
営業活動は一つの流れとして捉える
営業活動は
まず、基本的なことを伺いますが、河村様は「営業活動」をどのように定義されていますか。
「営業活動」というと、訪問、提案など、お客様と直接向き合う場面をイメージされるかもしれません。しかし私は、営業活動とは、自社とお客様が関わる一連の体験、そのすべてに関わる活動だと考えています。
つまり、見込み顧客の獲得から初期アプローチ、訪問、そして受注後のフォローまで。これらすべてを、一続きの営業活動だと捉えています。図1

現在は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスと、役割を分けている企業も増えていますが、こうした工程を一人の営業担当者が担っている企業もまだまだ少なくないと思います。
一人ですべてを担う環境の場合に、考えておくべき課題はありますか。
一人で担っているからこそ、新規顧客にどこまでアプローチするのか、受注後にどこまで能動的にフォローするのかといったことが、その人の判断に委ねられやすくなります。
また営業担当者には、「具体的な成果を上げたい」「お客様を喜ばせたい」という思いがあり、どうしても既存顧客や既存取引に意識が向く傾向があります。もちろん、それ自体は非常に大切なことです。一方で、新規顧客へのアプローチのように、まだ関係性ができていない相手に働きかける活動は後回しになりやすいのも事実です。
だからこそ、目の前の活動だけでなく、その前後にどのような工程があるのかを全体として捉えておくことで、自分の取り組みの中で不足している点や偏りに気づけるようになります。
もちろん、これは役割を分業している組織であっても、起こり得ることです。それぞれの部門が「一続きの営業活動」のどこを担っているのか、全体像を理解しておくことが不可欠です。
特に営業活動が属人化しやすいところはどこでしょうか。
お客様と対面する、主に商談(フィールドセールス)の領域です。特定の担当者の経験や感覚に依存し、組織として再現性を持ちにくくなりがちです。
その状態を解消する、わかりやすい解決策として陥りがちなのが、トップパフォーマーの“技”を共有しようという考えです。しかし、“技”だけを共有しても、実際にはほとんど意味はありません。例えば、お客様と距離を縮めるように振る舞う“技”は、関係性ができていない段階ではかえって逆効果ですよね。その“技”が効果的に機能するためには、その前提となる関係性やお客様の状態があるはずです。
ですから、必要なのは個々のテクニックを拾い上げることではありません。先ほど申し上げた営業活動の全体像を踏まえた上で、組織としてこの商談をどのように進めるのかを、営業プロセスとして定義する必要があります。その流れがあって初めて、個々のノウハウの効果的な活用場面も見えてくるのだと思います。
では、営業プロセスを定義する上で、重要な考え方はありますか。
単に「アプローチ」「ヒアリング」「提案」「受注」といったフェーズ名を並べることではありません。それぞれの言葉が「具体的にどのような状態を指しているのか」といった解像度で、組織としての認識をそろえておく必要があります。
例えば「提案」という言葉一つをとっても、お客様に求められていない段階でも概算を提示すれば「提案」と捉える人もいれば、お客様に「社内稟議に使いたいので費用を出してほしい」と依頼されてから概算を出すことを「提案」と捉える人もいます。言葉は同じでも、指している「状態」が違うわけです。
こうした定義が曖昧なままだと、自分がどのフェーズにいるのかを見誤ったり、関係者間で案件の見立てがずれたりします。例えば、担当者は「あと一押し」と考えてマネージャーに同行を依頼したのに、実際にはお客様側の検討がそこまで進んでいない、ということも起こり得ます。その結果、機会損失につながったり、必要なタイミングでマネージャーからの支援を受けられなかったりします。
具体的に定義していくには、まず何から整理していくべきでしょうか。
まずは、フェーズを区切ること。自社の動きである「販売プロセス」を設計していくことです。その際、お客様の購買活動のステップである「購買プロセス」を踏まえることが重要です。図2

区切りが決まったら、先ほどお話しした「状態」の定義を各フェーズに落とし込んでいきます。「ニーズ把握・共有」では、単にヒアリングをして話を聞くだけでよいのか。それとも、課題の認識をすり合わせ、「その理解で間違いない」と合意を得る状態まで含めるのか。ここまで明確にしなければ、組織としての認識はそろいません。
フェーズを区切ったあと、次に見るべきポイントはどこになるのでしょうか。
その後は、各フェーズで求められる「顧客の期待」を洗い出していきます。営業活動は一方的に進められるものではなく、お客様の納得や理解が得られて初めて、次の段階に進んでいけるものだからです。
具体的には、初期のアプローチ段階であれば、お客様には「自社のことをきちんと調べてから来てほしい」「自社の課題に対して一定の仮説を持ってきてほしい」といった期待が考えられます。
その上で、「お客様がどのような状態であれば次のフェーズに進めるのか」というゴールの定義も重要です。ゴールが明確になっていれば、営業プロセスを前に進めてよいかどうかの判断基準となります。
顧客の期待を整理すると、営業担当者の必要な行動も見えてきそうですね。
おっしゃるとおりです。次は、整理した顧客の期待に応えるために、どのような働きかけが必要なのかを整理していきます。例えば、「事前に仮説を立てて資料にまとめて持参する」「課題にマッチした事例を用意する」といった動きです。
さらに重要なのは、こうして整理した顧客の期待や営業活動について、実際にお客様とすり合わせを行い、フィードバックを得ながらブラッシュアップしていくこと。これにより、期待していた内容とのズレや、想定していなかったニーズに気づけます。
そしてこうした内容は、組織として共通認識を持てるように「明文化」しておかなければなりません。「販売プロセス」「顧客の期待」「それに応える活動」、そして次に進むための「ゴール」などを一体として整理、明文化したものが営業プロセスの全体像です。私たちは、これを「基軸営業プロセス」と呼んでいます。図3

基軸営業プロセスが整備されれば、迷いがなくなりそうです。
はい。組織で共通の前提を持って、営業活動を進められるようになります。ただ、注意しなければならないのは、これを「手順書」として捉えてしまうことです。フェーズや顧客の期待、必要な活動が定義されると、「1から10までそのとおりにやらなければならない」と考えてしまいがちですが、決してそういうものではありません。
むしろこれは、“地図”のようなものです。現在地がどこで、どこに向かうのか、その間にどのような道筋があり、何をしていく必要があるのか――そうした全体像を把握するためのものなのです。
その“地図”があることで、実際の現場ではどのように役立つのでしょうか。
フェーズの定義や次のフェーズに進むためのゴールが明確になり、「この案件は今どの段階にあるのか」といった現在地を、組織内で認識のズレがなく把握できるようになります。
共通認識があり、現在地がわかるからこそ、適切なタイミングでマネジメントできるようになりますし、商談全体を俯瞰しながら、「どのように進めていくのがよいのか」を考えられるようになります。
その結果として、「このお客様には何が必要なのか」「何はやるべきではないのか」といった判断ができるようになり、個々の商談に応じた最適な「攻略シナリオ」を描けるようになります。
SFAは営業の“地図”に対して、
現在地と状態を正しくひもづける仕組み
現在地と
組織として営業の“地図”を運用していくには、どのような仕組みが必要ですか。
組織で運用していくには、その状態を正しく記録し、共有できる仕組みが必要になります。SFA / CRMツールは、そのための基盤です。
こうしたツールでは、顧客情報や案件の情報、営業活動の履歴といったものをひもづけて扱うことができます。例えば、「どの顧客に対して」「どの案件の中で」「何の目的で行ったのか」といったその活動の意味や位置づけまでを把握できるようになります。単なる訪問記録ではなく、その活動が関係構築のためのものだったのか、それとも商談を前に進めるためのものだったのか、といった各活動の「意味」まで含めて見えるようになるわけです。
こうして活動と営業の状態がつながることで、「この打ち手は意味があったのか」「次に何をすべきか」といった判断や議論ができるようになります。また、こうした情報を蓄積していくことで、営業活動のどの部分に課題があるのかといった点も見えやすくなります。
一方で、SFAやCRMツールを導入しても「使われない」というケースもよく聞きます。
記録すること自体が目的になってしまうと、使われなくなります。確かに記録は必要ですが、ただ情報を入れるだけでは意味がありません。その情報が営業活動の中でどう活用できるのか、いわゆる“生きた情報”になっていないと、現場では使われないのです。
よくあるのが、訪問記録を日報のようにテキストで入力するケースですが、それでは活用しづらい。必要な情報を取り出すために、毎回読み返さなければいけないからです。
重要なのは、情報をどう整理し、どうつなげると“生きた情報”になるのかという点です。そのためには、営業担当者として何が課題で、何を解決したいのかを明確にしておく必要があります。その前提がない状態だと、何のために情報を扱うのかが曖昧になり、入力する項目だけが増えてしまいます。同様に、SFAやCRMツールにはさまざまな機能がありますが、重要なのはそれらをすべて使うことではありません。
「何のためにその情報を扱うのか」という視点がないままに、入力項目や機能が増えると、使いづらくなってしまいます。
SFAやCRMツールを効果的に活用するには、どのような点を意識すべきでしょうか。
重要なのは、「前に進んでいるのかどうか」を正しく把握できることです。そのためには、案件ごとにどのフェーズにいるのか、そして次のフェーズに進める状態にあるのかどうかを、きちんと管理する必要があります。
例えば、顧客の課題が整理できているのか、競合状況が把握できているのか、提案に対する理解や合意が得られているのか。そうした条件が満たされているかどうかを確認できることが重要です。
そのために、必要な項目を整理して、チェック形式やプルダウンで管理していく。例えば競合が「いる」のか「いない」のか、いる場合は「優位」なのか「劣位」なのか、統一書式で入力して、情報を整理しておくことで、その案件の状況を客観的に把握できるようになります。
こうした情報を積み上げていくことで、「この案件は本当に次に進める状態なのか」といった判断ができるようになりますし、営業活動の質もそろってきます。
つまり、SFAは営業の“地図”に対して、現在地と状態を正しくひもづけるための仕組みだと捉えることが重要だと思います。図4

貴社では、営業プロセスの整理やSFAの活用に向けて、どのような支援を提供されているのでしょうか。
まずは、ここまでお話ししてきたような基軸営業プロセス、いわゆる“地図”をつくる支援です。ご相談をいただいた企業のトップパフォーマーに集まっていただき、それぞれの活動を洗い出しながら、フェーズや顧客の期待、必要な活動といったものを整理していきます。
ただ、“地図”をつくるだけでは、それはまだ使える状態ではありません。重要なのは、それをどのように運用するかです。そこで、営業担当者としてどのような課題を解決したいのかをヒアリングし整理した上で、その“地図”と連動させながら、SFAやCRMツールにどう落とし込むかといった運用設計までを支援しています。
営業プロセスの整理に、客観的な視点を取り入れるメリットはどういったことでしょうか。
すべての営業活動を一人で担っているケースや、暗黙知が多い組織では、プロセスを一から整理して言語化するのは容易ではありません。
特にトップパフォーマーは、経験に基づいた感覚は優れている一方で、自身の行動を的確に言語化することが苦手なケースも多くあります。だからこそ、営業活動そのものを理解した第三者が入り、全体を俯瞰しながら整理していくことに価値があります。いわば、 “交通整理役”のような存在です。
営業活動を“見える化”し、組織として扱える状態にしていく。その第一歩として、こうした取り組みを検討してみることが重要なのではないでしょうか。
(「SKYPCE NEWS Vol.25」 2026年07月掲載 / 2026年5月取材)
撮影場所:WeWork ギンザシックス