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Sky株式会社

公開日2026.08.24

現役弁護士が解説! 名刺と法令の旬トピ ー第7回ー名刺と意匠権:名刺のデザインは法的に保護される?②

著者:Sky株式会社

名刺と意匠権:名刺のデザインは法的に保護される?②

「SKYPCE」をはじめとする名刺管理サービスを使用する上で、法令の観点から留意しておきたいポイントが多々あります。このコーナーでは、名刺情報や名刺管理サービスにまつわる最新情報について、法律のプロである現役弁護士に解説いただきます。今回は、前回に引き続き、自身が作成した名刺のデザインが、法的な保護の対象となるかどうかを解説します。

岡田 淳 氏

森・濱田松本法律事務所 外国法共同事業パートナー弁護士

岡田 淳 氏

東京大学法学部卒業、ハーバード大学ロースクール修了。内閣府「AI戦略専門調査会」委員、同「AI時代の知的財産権検討会」委員、個人情報保護委員会「個人情報保護政策に関する懇談会」会員、「東京都AI戦略会議」委員などを歴任。主な業務分野として、テクノロジー、知的財産権、個人情報およびサイバーセキュリティ等の案件を手掛ける。

松井 佑樹 氏

森・濱田松本法律事務所外国法共同事業アソシエイト弁護士

松井 佑樹 氏

慶應義塾大学法学部法律学科卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。知的財産のほか、J-REIT / 投資信託に関する業務に携わる。著書『改訂版 ビジネス法体系 知的財産法』(共著、第一法規出版、2025年)ほか。

SKYPCE コラムサイト編集部

SKYPCE コラムサイト編集部は、名刺管理をベースにした営業やマーケティングの施策のほか、営業DXや業務効率化などの各種取り組みに役立つ情報を発信しています。
「SKYPCE」を開発・販売するSky株式会社には、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、ソリューションアーキテクト、JDLA Deep Learning for GENERAL / ENGINEERなどの資格取得者が多数在籍しています。それらの知見をもとに、名刺の管理効率化だけではなく、より戦略的に活用範囲を広げた「名刺によるDXの実現」を目指しています。

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今回のトピック


プロのデザイナーとして活動するAさんは、知名度こそ高くないものの、取引先との商談や新規顧客の開拓の際に、ロゴの配置や余白、色の組み合わせ、模様などに工夫を凝らした、特徴的なデザインの名刺を作成・配付する取り組みを行ってきました。あるとき、Aさんは、面識のないデザイナーのBさんが、Aさんが作成・配付している名刺と似たデザインを用いた名刺を使用していることを、SNS上の投稿で偶然知りました。Aさんとしては、Bさんが名刺を使うことを止めたいと考えていますが、法的にはどのように考えられるでしょうか。

前回は、名刺デザインの著作権による保護の可否を取り上げました。今回は、意匠法による保護の可否について解説します。

1.意匠法と著作権法

意匠法は、法律に基づき登録された「意匠(登録意匠)」について意匠権が発生することを定め、意匠権者が登録意匠およびこれに類似する意匠を業として実施※1する権利を専有することを定めています(意匠法第23条)。「意匠」とは、物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合等であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます(意匠法第2条第1項)。名刺の形状、模様、色彩の組み合わせなどは、単なる記載情報を超えて外観上の特徴として把握される限り、名刺という物品の意匠として意匠法上の「意匠」になり得ます※2

前回解説した著作権は、創作行為により当然に発生し、登録などの手続きを必要としない、いわゆる無方式主義を採用していました。これに対し、意匠権は、創作しただけで当然に発生する権利ではなく、保護を受けようとする意匠について特許庁に意匠登録出願をし、審査を経て意匠登録を受ける必要があります。意匠登録を受けるためには、工業上利用できる意匠であること、今までにない新しい意匠である(新規性がある)こと、容易に創作できたものではないこと等の要件を満たす必要があります。

この中でも、新規性の要件については、自分自身が創作した意匠であっても、出願前に公開された意匠は新規性を備えない点に注意が必要です。すなわち、出願の対象となる意匠を出願前に販売してしまったり、SNSやWebサイトで公開したりしてしまうと、出願時に新規性を喪失していると判断される可能性があります。一定の場合には新規性喪失の例外規定(意匠法第4条)を利用できることもありますが、意匠権による保護を検討するのであれば、原則として公表前の出願を意識する必要があります。

また、著作権侵害が認められるためには、問題となる表現が既存の著作物に類似していること(類似性)に加え、既存の著作物をまねして問題となる表現が作成されたこと(依拠性)が必要とされています。これに対して、意匠権の場合、その効力は登録意匠そのものだけでなく、これに類似する意匠にも及びますが、意匠権侵害の判断において、依拠性は問題となりません。有効な登録意匠が存在し、当該登録意匠またはこれに類似する意匠が業として実施されていれば、意匠権侵害が成立する可能性があります【表】。

※1 意匠に係る物品の製造、使用、譲渡等を意味します(詳細は意匠法第2条第2項参照)。
※2 名刺が意匠登録された例については、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)に公開されています(例として、意匠登録第1521138号)。

2.名刺のデザインと意匠法

Aさんの名刺は、ロゴの配置、余白、色の組み合わせ、模様などに工夫を凝らした特徴的なデザインを用いたものであるため、意匠登録のための要件を満たしている可能性があります。しかし、意匠権は登録意匠にのみ発生する権利であり、Aさんが当該名刺のデザインについて意匠登録をしていない場合、意匠権の対象とはなりません。仮にAさんの名刺のデザインについて意匠登録がされていた場合には、Bさんの名刺がAさんの登録意匠と同一または類似の意匠と判断されれば、意匠権侵害が成立する可能性があります。

なお、AさんとBさんは面識がなく、BさんはAさんの名刺の存在を知らずに自身の名刺を創作している可能性があります。しかし、Bさんの名刺が有効な登録意匠と同一または類似の意匠の範囲に含まれるのであれば、そのような事情は意匠権侵害の成立に影響を及ぼしません。この点は、たとえAさんの名刺とBさんの名刺がよく似ていたとしても、BさんがAさんの名刺に依拠することなく自身の名刺を創作していた場合には著作権侵害が認められないこととは異なります。

(「SKYPCE NEWS Vol.25」 2026年7月掲載)