現役弁護士が解説! 名刺と法令の旬トピ ー第6回ー名刺と著作権:名刺のデザインは法的に保護される?①

「SKYPCE」をはじめとする名刺管理サービスを使用する上で、法令の観点から留意しておきたいポイントが多々あります。このコーナーでは、名刺情報や名刺管理サービスにまつわる最新情報について、法律のプロである現役弁護士に解説いただきます。今回は、自身が作成した名刺のデザインが、法的な保護の対象となるかどうかを解説します。

森・濱田松本法律事務所 外国法共同事業パートナー弁護士
岡田 淳 氏
東京大学法学部卒業、ハーバード大学ロースクール修了。内閣府「AI戦略会議」構成員、同「AI時代の知的財産権検討会」委員、個人情報保護委員会「個人情報保護政策に関する懇談会」会員、「東京都AI戦略会議」委員などを歴任。主な業務分野として、テクノロジー、知的財産権、個人情報およびサイバーセキュリティ等の案件を手掛ける。

森・濱田松本法律事務所外国法共同事業アソシエイト弁護士
松井 佑樹 氏
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。知的財産のほか、J-REIT / 投資信託に関する業務に携わる。著書『改訂版 ビジネス法体系 知的財産法』(共著、第一法規出版、2025年)ほか。
今回のトピック
プロのデザイナーとして活動するAさんは、知名度こそ高くないものの、取引先との商談や新規顧客の開拓の際に、自らの特徴的なデザインを用いた名刺を作成・配付する取り組みを行ってきました。ある時、Aさんは、面識のないデザイナーのBさんが、Aさんが作成・配布していた名刺と似たデザインを用いた名刺を使用していることを、SNS上の投稿で偶然知りました。Aさんとしては、Bさんが名刺を使うことを止めたいと考えていますが、法的にはどのように考えられるでしょうか。
名刺は、単なる連絡先の表示媒体にとどまらず、企業や個人のブランドイメージを体現する重要なコミュニケーションツールです。近年では、ロゴや配色、レイアウト、紙質や加工方法に工夫を凝らしたデザイン性の高い名刺も増えており、その視覚的印象が営業活動やブランディングに与える影響は小さくありません。今回は、このような名刺のデザインが法的に保護されるのか否かについて解説します。
1.名刺のデザインと著作権法
名刺のデザインのように、人の創造的活動によって生み出されるものは、「知的財産」の一類型として、一定の場合には知的財産法による保護を受けるものとされています。この中で問題となるのが、著作物の保護を定めた著作権法です。「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を意味し(著作権法第2条第1項第1号)、アイデアを創作的に表現した具体的表現内容が保護の対象となります。名刺の場合は、名刺としてデザインされた具体的な表現内容が保護の対象となり得ます。著作物に対しては、著作物の利用に関する財産的価値に関する権利である著作権※1が発生し、一定の場合には、ほかの表現物について、著作権の侵害を理由とした差止請求権(著作権法第112条)などの権利行使が認められます。
今回のケースで著作権法が問題となるのは、著作権が創作行為により当然に発生し、登録などの手続きなしに著作者に権利が帰属する、いわゆる無方式主義を採用しているからです。すなわち、本件では、Aさんが作成した名刺が著作物に該当するものであれば、当該名刺を創作した段階で、作者であるAさんに著作権が帰属し、当該名刺の具体的表現は著作権により保護されることになります。
しかし、今回のケースにおいて著作権法による保護を考える際には、【資料】の内容を検討する必要があります。

2.名刺のデザインと著作権法以外の知的財産法
以上のように、今回のケースにおいて、Aさんの名刺の具体的表現が著作物として保護される可能性はただちに否定されるものではありません。しかし、著作権による保護にはいくつかのハードルがあります。
名刺のデザインについて、著作権以外に適用される可能性がある法律としては、意匠を保護する意匠法が考えられます。
(「SKYPCE NEWS Vol.24」 2026年6月掲載)