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Sky株式会社

公開日2024.03.01更新日2024.05.10

営業で心理学を活用! 役立つテクニック17選を解説

著者:Sky株式会社

営業で心理学を活用! 役立つテクニック17選を解説

営業の場で心理学テクニックを活用することで、顧客との信頼関係の構築や、成約の後押しに役立つ場合があります。ただし、商談で心理学テクニックを使うことを意識しすぎるあまり、不自然なトークになってしまうと、かえって不信感を抱かれる恐れがあるため、注意が必要です。この記事では、営業で使える心理学テクニックや、自然に使いこなすための練習方法などをご紹介します。

心理学とは

心理学は「行動の科学」とも呼ばれており、人間の行動や言動、思考から認識できない心の動き(深層心理)を科学的に解き明かす学問のことを指します。

心理学は大きく分けて基礎心理学と応用心理学の2種類があり、基礎心理学は心理学や学習心理学など応用研究の基礎となる分野、応用心理学は臨床心理学や犯罪心理学、スポーツ心理学など、基礎心理学の内容を踏まえ、人間の生活のなかで活用できる心理学の分野を指します。このように、心理学はビジネスやプライベートを問わずさまざまな場面で活用できる学問であるといえます。

営業でも活用できる

営業は、顧客に自社の商品やサービスを契約してもらい、課題解決へ導くことを目的としています。契約に至るまでには、顧客にとって魅力的なアプローチや、顧客とのコミュニケーションによる信頼関係の構築が重視されます。このとき、顧客の深層心理を理解したり、顧客の心を動かすアプローチを行ったりする際に、心理学が役立ちます。顧客との関係性を深めるための心理学や、提案内容を魅力的に伝えるための心理学、受注率を高めるための心理学など、さまざまな心理学を営業活動に活用できます。

ただし、心理学を活用しようとするあまり、かえって不自然な営業アプローチをしてしまう場合もあります。「顧客との距離を縮めるために心理学を生かしたテクニックを扱う」など、役立てられそうな心理学から少しずつ試してみることをお勧めします。

営業で心理学を活用するメリット

営業活動を行うなかで心理学を活用することで、顧客との関係構築や商談での提案といった場面では次のようなメリットが得られます。

顧客から信頼してもらいやすい

営業活動に心理学を取り入れると、顧客との信頼関係を構築しやすくなります。どれだけ顧客にとって都合の良い提案内容であったとしても、顧客が営業担当者や自社を信頼していない場合、契約には踏み切れません。心理学を取り入れることで、顧客に寄り添った対応や安心感を与える会話の仕方がどのようなものかを理解できるようになり、顧客との関係構築に役立ちます。

提案内容の説得力が増す

営業活動に心理学を取り入れることで、提案内容の説得力が高まり、成約率の向上が期待できます。単に商品やサービスの良さをアピールするのではなく、時にはデメリットや課題点の話を交えながら顧客にとって有益な情報を伝えるなどのテクニックを使いこなすことで、顧客は「こちらのことを第一に考えて提案をしてくれている」「この商品こそが本当に必要かもしれない」と提案に対して納得してもらいやすくなります。

営業で使える心理学テクニック一覧

ここでは、営業活動で活用できる代表的な心理学テクニックをご紹介します。「このテクニックを商談のテストクロージングで使ってみよう」など、取り入れられそうなものから少しずつ取り入れるのがお勧めです。

顧客との距離を縮める際に役立つテクニック

顧客と距離を縮め、信頼関係を築く際に役立つ心理学テクニックは、次のとおりです。

ミラーリング

ミラーリングとは、相手の行動を鏡に映したかのようにまねする手法を意味します。「自分と似たものに対して親近感を抱きやすい」という人間の心理を利用し、顧客が飲み物を飲んだら自分も飲む、といったように同じ行動を取ることで顧客との距離を縮め、関係構築を図ります。顧客の動作だけでなく、顧客が笑ったタイミングに合わせて一緒に笑ったり、話のテンポや口調を合わせたりすることでもミラーリングの効果が期待できます。

好意の返報性

好意の返報性は、「相手から好意を受け取った場合、同等の好意を返したくなる」という人間の心理を利用したテクニックです。顧客に好意を向ける方法はさまざまで、顧客が身につけているスーツやアクセサリーを褒めたり、顧客の経歴や実績などを褒めたりすることで好印象を抱いてもらいやすくなり、「これだけの好意を受け取ったのだから、何か力になってあげたい」という気持ちを引き起こします。ただし、わざとらしい褒め方や、見返りを求めていることが顧客に伝わってしまうようなアプローチは、かえって不快感を与えることにもつながるため、あくまで不自然に感じられない程度に好意を伝えることを意識します。

単純接触効果

単純接触効果は、「接触する回数が増えることで好意を抱きやすい」という人間の心理を利用したテクニックで、ザイオンス効果とも呼ばれています。営業活動において単純接触効果を活用する場合は、顧客との定期的なコミュニケーションを意識します。例えば、顧客の元を何度も訪問したり、こまめに電話やメールで連絡を取ったり、顧客が開くセミナーやイベントに積極的に参加したりなどのアプローチが挙げられます。しかし、過度な接触はかえって顧客が迷惑に感じる場合もあるため注意が必要です。

バーナム効果

バーナム効果とは、「大半の人に当てはまる内容が、自身にだけ当てはまる内容だと感じる」という人間の心理を利用したテクニックです。アメリカの心理学者であるバートラム・フォア氏の名をとり、フォアラー効果と呼ばれることもあります。バーナム効果を感じやすい身近な例では、星座占いや血液型占いなどの占いが挙げられます。営業で活用する際は、「貴社は〇〇に関してお困り事はございませんか?」「企業として〇〇を活発化させたいとお考えではないですか?」など、多くの企業に当てはまる内容を顧客に向けて聞くことで、「自社のことをよく理解してくれている」という信頼感の向上につながる可能性があり、顧客の本音を引き出しやすくなります。

ピークエンドの法則

ピークエンドの法則は、一連の体験のなかで最も感情が動いた瞬間(ピーク)と終わった瞬間(エンド)のみで、ある体験の全体の印象を決める法則を指します。例えば、商談においてのピークは対面時のあいさつで、エンドは別れ際が該当します。そのため、顧客との対面時に暗い表情や声のトーンであいさつをしてしまうと、顧客の記憶に好印象を残しづらくなるため注意が必要です。商品やサービスの提案内容に自信がないと思われないよう、終始明るく堂々とした振る舞いを心掛けます。別れ際にも、商談の時間をつくってくれたことへの感謝を伝えたり、顧客の姿が見えなくなるまで深くお辞儀をして見送ったりするなどの丁寧な対応を意識することで、顧客に好印象を抱いてもらいやすくなります。

オープンクエスチョン

オープンクエスチョンは、相手が「はい」「いいえ」では答えられない質問のことを指し、相手によって返答内容が異なります。例えば、「他社のサービスを利用していて、どのような点に課題を感じましたか?」や「自社の商品を利用していて、特に良かった点は何ですか?」など、顧客に具体的な回答を求めることができます。オープンクエスチョンを使いこなすことで、顧客の考えが把握しやすくなり、顧客からの回答をさらに深掘りする質問を続けることで多くの情報を引き出せる可能性が高まるため、ヒアリング時にお勧めのテクニックです。

説得力を高める際に役立つテクニック

商談時のセールストークの説得力を高め、顧客に納得してもらう際に役立つ心理学テクニックは、次のとおりです。

ウィンザー効果

ウィンザー効果は、「その場にいない第三者による情報は信ぴょう性が高く感じられる」という人間の心理を利用したテクニックです。身近な例では口コミやレビューが挙げられ、第三者の目線でのコメントは客観的な視点から提供されたもののため、説得力が増します。

商談の場で活用する際は、単に「弊社の〇〇は〇〇の面がお勧めです」と伝えるよりも、「アンケートによると、弊社の〇〇は〇〇の面で高い評価をいただいております」と提案する方が、顧客に響きやすい傾向があります。ウィンザー効果を活用するためには、自社でアンケートを行ったり、口コミやレビューを集めたりすることで、第三者からの意見を多く取り入れることが大切です。

メラビアンの法則

メラビアンの法則とは、1971年にアメリカの心理学者であるアルバート・メラビアン氏が著書『Silent Messages』で提唱した法則で、人と人がコミュニケーションを行う際に、聞き手は話し手のどのような情報によって印象を決定づけやすいのかを表した概念を指します。メラビアンの法則は、「7-38-55のルール」や「3Vの法則」とも呼ばれています。

メラビアンの法則では、人と人のコミュニケーションにおいて、聞き手が話し手から受けやすい情報の割合は、会話内容をはじめとした言語情報が7%、声や話し方などの聴覚情報が35%、見た目による視覚情報が55%だと示されています。つまり、商談においては営業担当者の見た目や表情、商品やサービスの写真や動画などが、最も顧客の印象に残りやすいことがいえます。

そのため、商談に臨む際は自身の服装や髪型に清潔感があるか、明るい表情やリアクションができているかを意識します。商品やサービスの提案をする際は、顧客に興味を示してもらいやすいよう、写真や図を多く使った視覚的に理解しやすい資料を用いながら説明するのがお勧めです。

両面提示の法則

両面提示の法則とは、メリットとデメリットの両方を伝えることで信頼感が得やすくなる法則です。商品やサービスの良い面だけではなく、悪い面も伝えることで、顧客にとっての商品やサービスの解像度が高まり、信頼を寄せやすくなります。デメリットを説明する際は、メリットにつながるよう伝えることがお勧めです。例えば、「〇〇の導入費用は他社様よりも高めですが、他社様では追加オプションとなる機能が初期から搭載されているためお得です」といった伝え方ができます。

フレーミング効果

フレーミング効果とは、伝え方を変えることで顧客に与えるイメージを変化させるテクニックを指します。例えば、「〇〇を導入した企業の10%は業務効率化を実現できていない」と「〇〇を導入した企業の90%が業務効率化を実現した」は、書き方は異なるものの、同じ内容を表しています。このとき、前者より後者の方が顧客はポジティブな印象を抱きやすい点がフレーミング効果を現しています。

フレーミング効果は「プロスペクト理論」における「人間は損失を回避する傾向がある」という性質にも関連しており、「10%が失敗する」と伝えることで損失を回避する思考に至るケースがあります。

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果は、「人間が意思決定をする際は、周囲の意見に基づいて判断する」という人間の心理を利用したテクニックです。例えば、「弊社のサービスは〇〇社にご利用いただいております」「あの大企業の〇〇社や〇〇社も弊社のサービスで売上が向上しました」などのフレーズを用いることで、顧客は「多くの企業が利用しているから効果があるのではないか」と購買意欲が高まりやすくなります。

交渉を進める際に役立つテクニック

なるべく条件を変えず、自社の提案を相手に受け入れてもらう際に役立つ心理学テクニックは、次のとおりです。

ドア・イン・ザ・フェイス

ドア・イン・ザ・フェイスは、最初に難しい要求を提示した後に、本当に受け入れてほしい要求を提示することで顧客に受け入れてもらいやすくするテクニックです。「難しい要求を断った後だと、断ったことによる罪悪感が生まれ、次の要求を受け入れやすくなる」という人間の心理を利用しています。最初は顧客から断られることを前提とした商品やサービスを薦めた後にハードルを下げ、本当に受注を狙っている商品やサービスを提案することで、受注につながる可能性が高まります。

フット・イン・ザ・ドア

フット・イン・ザ・ドアは、ドア・イン・ザ・フェイスと反対に、最初に受け入れやすい要求を提示し、徐々に要求の難易度を上げて最終的に本当に受け入れてほしい要求へつなげるテクニックで、「段階的に要求をすることで、いきなり難しい要求を提示するよりも受け入れてもらいやすい」という人間の心理を利用しています。営業の場で活用する際は、「まずは無料で1か月お試しいただけますか?」「まずは簡単なアンケートにお答えいただけますか?」など、顧客が受け入れやすい要求を提示するのがお勧めです。

ローボールテクニック

ローボールテクニックは、最初は相手が受け入れやすい条件のみで要求を提示し、承諾された後に悪い条件を明らかにしたり、好条件を取り下げたりするテクニックです。ローボールテクニックは、「一度要求を承諾したら、その後に条件が変わっても承諾してしまう」という人間の心理を利用しています。

営業では、最初に顧客が手を出しやすい金額で商品やサービスを提案し、承諾してくれた後に追加で必要なオプション費用やサポート費用を提示するといったケースで用いられます。

ローボールテクニックはフット・イン・ザ・ドアと似ていますが、フット・イン・ザ・ドアは相手が受け入れやすい条件から提示した後に、ハードルの高い要求を追加していくのに対して、ローボールテクニックは最初に好条件だけを明らかにした後、悪い条件を明らかにしたり好条件を取り下げたりします。

分析麻痺

分析麻痺は、「選択肢が多すぎると考えすぎてしまい、行動に移せなくなる」という心理を表します。顧客が分析麻痺に陥ってしまうと、どのプランやオプションを選ぶのがよいか判断できず、何も契約しないという結果に至ることも考えられます。このような分析麻痺を避けるために、顧客に提案する際は、あらかじめ顧客の課題やニーズに合わせ、顧客に適したプランなどをある程度絞り込んだ状態で臨むのがお勧めです。

マジカルナンバー7±2(4±1)

マジカルナンバー7±2とは、人間が短期的に記憶できる情報の数は7±2(5~9)であることを示した法則で、アメリカの心理学者ジョージ・ミラー氏が1956年に発表した論文『The Magical number seven, plus or minus two』にて提唱されたことから「ミラーの法則」とも呼ばれています。その後、2001年にはアメリカの心理学者ネルソン・コーワン氏が「マジカルナンバー4±1」を発表し、人間が短期的に記憶できる情報の数は4±1(3~5)だと述べています。

これらのマジカルナンバーを活用し、営業の場で顧客に商品やサービスの提案を行う際は、メリットやデメリット、金額、導入実績などをすべて説明するのではなく、顧客が興味を持ちそうな内容を5つ程度に絞って簡潔に説明することで、顧客の記憶に残りやすくなります。

カリギュラ効果

カリギュラ効果は、「禁止や制限を受けると、逆に気になってしまう」という人間の心理を利用したテクニックです。人間は基本的に自身の行動を自由に決定したいものの、制限があるとストレスになり、ストレスを解消するために制限された行動をしてしまう傾向があります。営業の場では、「弊社のサービスは期間限定で〇〇%割引で提供しております」「限定〇〇社に無料キャンペーンを実施しています」などの制限を設けることで、顧客の購買意欲を高められます。

営業で心理学テクニックを成功させるコツ

商談で心理学テクニックを使いこなす際には、身ぶり手ぶりにも気を遣いながら、自然に話すことが重要です。先述したテクニックを用いてセールストークが上達した場合でも、ただ話し続けているだけでは、顧客にわざとらしい印象を与えてしまい、不信感を抱かせる可能性があります。心理学テクニックを受注につなげるための手段と捉えるのではなく、顧客の課題解決につながる提案をするために必要な手段と捉えることで、顧客を第一に考えた自然なセールストークが目指せます。

心理学テクニックの練習方法

心理学テクニックを身につけ、うまく扱えるようになるためには、次のような方法で練習するのがお勧めです。

トークスクリプトの中に含む

営業チーム内でトークスクリプト(台本)が用意されている場合は、トークスクリプトの中に心理学テクニックを含んだ内容を盛り込むことで、自然に心理学テクニックを活用した営業トークが行えます。基本的にはトークスクリプトに沿って営業トークを進めるため、商談中に不自然なタイミングで心理学テクニックを使ってしまうといった状況を防げます。複数パターンのトークスクリプトがある場合は、それぞれの内容に適した心理学テクニックを混ぜることで、さまざまな種類の心理学テクニックを扱えるようになります。

社内でロールプレーイングを行う

いきなり顧客との商談に臨む前に、まずは社内の営業担当者同士や、チーム内でロールプレーイングするのがお勧めです。実際の商談のように会話を進めることで、心理学テクニックを使うタイミングや話しぶりを確認でき、本番までに再度改善点を見つけ、営業トークのクオリティを高めることができます。ロールプレーイングをする際は、自身よりも営業成績の高いメンバーに相手をしてもらうことで、精度の高いフィードバックが期待できます。

実際に使い改善を繰り返す

ロールプレーイングやトークスクリプトのブラッシュアップができたら、顧客との商談の場で実践します。実際に心理学テクニックを使った後は、顧客の反応に変化があったか、不自然な会話になっていなかったか、タイミングは適切であったかなどの点に注目しながら振り返りを行います。次回に向けての改善点が見つけられたら、あらためてロールプレーイングを行ったり、トークスクリプトの内容を見直したりしながら、最適な営業トークを目指します。

まと

この記事では、営業で心理学を活用するメリットやテクニック、練習方法をご紹介しました。商談で心理学テクニックを活用することで、顧客の購買意欲を後押ししたり、信頼関係の構築に役立ったりすることがあります。記事内でご紹介したテクニックや練習方法を、ぜひご活用ください。