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Sky株式会社

公開日2023.10.20更新日2024.11.27

固定電話の廃止によって何が起きる? メリットや注意点を解説

著者:Sky株式会社

固定電話の廃止によって何が起きる? メリットや注意点を解説

2024年1月に固定電話が廃止され、IP電話へ切り替わることでどのような影響が発生するのでしょうか。この記事では、固定電話の廃止に伴って起こる変化やメリットについてご紹介します。なお、企業において固定電話機を廃止する際には注意点もあります。固定電話の廃止に伴い対応策に悩んでいる方の参考になれば幸いです。

固定電話からIP電話への切り替えとは

固定電話からIP電話への切り替えとは「PSTN接続」から「IP網接続」へ切り替わることを意味します。

PSTN(Public Switched Telephone Networks)は公衆電話交換回線網とも呼ばれ、通信事業者が提供する固定電話の回線ネットワークを指します。IP(Internet Protocol)網は、IPネットワークとも呼ばれ、インターネットと同様の仕組みで接続されたネットワークを指します。

従来の固定電話では、発信者から受信者に電話をかける際にPSTN接続を行い、複数の交換機を用いて音声信号をアナログ伝送していました。PSTN接続がIP網接続に切り替わることで、中継ルーターを用いた音声データの送受信が行われます。

なお、固定電話の交換機には次の4種類があります。

  • 加入者交換機:電話加入者の端末が接続する交換機
  • 相互接続交換機:発信者側の加入者交換機から受信者の電話へ接続させるための交換機
  • 中継交換機:加入者交換機と相互接続交換機を結ぶ交換機
  • 信号交換機:各種交換機が発する信号を制御する交換機

固定電話はなぜ廃止されるのか

固定電話が廃止される理由は、次のとおりです。

固定電話サービスにおける加入件数の減少

NTTが提供する固定電話サービスへの加入件数の減少が、理由の一つとして挙げられます。総務省の「情報通信白書 令和5年版」によると、NTTが提供する固定電話サービスの加入件数は年々減少しており、2012年から2022年の10年間で3,274万件から1,503万件とほぼ半減しています。対して、IP電話は2012年から2022年の10年間で2,407万件から3,608万件へ大幅に増加しています。

中継交換機や信号交換機の老朽化

前述のとおり、固定電話におけるPSTN接続では複数の交換機を利用していますが、固定電話サービスの加入件数の減少に伴い、各ベンダーが2015年をめどに各種交換機の製造を終了しました。現在利用している中継交換機、信号交換機の老朽化によってサービスを維持することが難しいことから、NTTでは固定電話を廃止しIP電話への移行を進めています。

固定電話が廃止され、IP網に切り替わると何が起きる?

固定電話の廃止からIP網に切り替わることに関連して起きる問題もあり、主に次の2点が挙げられます。

INSネットの通信モードが提供終了

NTTでは、ISDN回線である「INSネット」を提供しています。固定電話の廃止に伴い、2024年1月よりINSネットにおける「ディジタル通信モード」は、地域ごとに段階的にサービスの提供を終了します。

INSネットのディジタル通信モードは、現在でもPOSレジやATMなどさまざまな用途で使われています。INSネットのディジタル通信モードを利用している場合は、別のサービスへの移行が必要です。

一部の電話サービスが提供終了

NTTでは2024年1月1日以降、IP網への切り替えと同時に一部の電話サービスの提供を終了します。例えば、発信したい相手が通話中かどうかを調べる「114」や着信のみ可能な「着信用電話」などが終了する予定です。もし、自社業務において頻繁に利用しているサービスがある場合は、代替サービスへの移行が必要です。

現在利用している固定電話機はどうなる?

固定電話の通信網が廃止になった後も、現在利用している固定電話機はネットワークの内部構造が再構築され、IP電話として利用し続けることができます。なお、NTTからもIP電話への移行に当たって工事や手続きは必要ないことが発表されています。

ただ、固定電話の廃止に便乗し、「IP電話への切り替え手続きの代行」などと称した詐欺や勧誘が増加しているため、ご注意ください。

固定電話の廃止によって仕様変更
または提供終了となるサービス

現在使用中の固定電話機はIP網に切り替わってもそのまま利用できますが、NTTでは仕様変更が行われたり、提供終了となるサービスがありますので、あらかじめご確認ください。

2024年1月以降に通話料金が変更されるサービス

2024年1月以降に通話料金が変更されるサービスは次のとおりです。IP網は距離に依存しないため、通話料金が安くなるケースもあります。

サービス名 変更後料金
県内からの通話 全国一律 9.35円 / 180秒
公衆電話からの通話 11円 / 62秒
携帯電話からの通話 11円 / 15秒
  • NTT東日本・NTT西日本の切り替え後の加入電話・INSネット・「ひかり電話」および「コラボ光ひかり電話」、他社加入電話、他社IP電話へ発信の場合

一部仕様が変更されるサービス

IP網への切り替え後に、一部仕様が変更されるサービスは次のとおりです。

  • 117(時報)
  • ナンバー・リクエスト
  • 迷惑電話おことわりサービス
  • フレックスホン(通信中転送機能)
  • 代表取扱いサービス(A/I混在代表)
  • 硬貨収納等信号送出機能(ピンク電話)
  • 通信中機器移動
  • 料金情報通知機能
  • ユーザ間情報通知

提供終了となるサービス

IP網への切り替えに伴って提供終了となるサービスは次のとおりです。

  • INSネット(ディジタル通信モード)
  • マイライン / マイラインプラス

継続して提供されるサービス

なお、次の各種サービスはIP網への切り替え後も継続して提供されます。

  • 加入電話(単独電話)
  • 公衆電話
  • 110(警察)
  • 118(海上保安)
  • 119(消防)
  • 117(時報)
  • 115(電報)
  • 104(番号案内)
  • 177(天気予報)
  • 迷惑電話おことわりサービス
  • キャッチホン
  • ボイスワープ
  • ボイスワープセレクト
  • ナンバー・ディスプレイ
  • ナンバー・リクエスト
  • フリーアクセス
  • 代表
  • #ダイヤル
  • ダイヤルイン
  • 硬貨収納等信号送出機能(ピンク電話)

固定電話とIP電話の違いとは

固定電話からIP電話への切り替えによってどのような変化が起きるのか、それぞれの特徴を踏まえて相違点をご紹介します。

電話回線の違い

固定電話とIP電話では、異なる回線を利用しています。前述のとおり、固定電話は中継交換機や信号交換機で伝送路を結び、通話回線を占有します。一方、IP電話はインターネット回線を利用して通話します。

かつてはIP電話に通信トラブルや音声品質における課題がありましたが、現在は5G回線の登場により徐々に改善されています。

通話料金の違い

固定電話がIP電話に切り替わることで、通話料金の削減につながる場合があります。固定電話では、発信者と受信者の距離に応じて通話料金が変動する仕組みでしたが、IP電話はインターネット回線を用いるため、距離にかかわらず通話料金が一律になります。

使用する電話番号の違い

固定電話は、設置場所ごとに「市外局番(03など)+市内局番+加入者番号」の電話番号を使用します。IP電話では、主に「050」から始まる電話番号を使用します。050から始まる電話番号はIP電話から発信されていることが周知されつつあります。しかし、市外局番がない(050で統一されている)ため、電話番号を見ただけでは発信元の場所がわかりません。こうしたことから、ビジネス用途では市外局番から始まる電話番号の方が、信頼性が高いと感じる人も少なからずいます。

IP電話のサービスによっては、市外局番から始まる電話番号を利用できる場合もあるので、電話の使用目的に応じて適切なサービスをご検討ください。

通話で利用できる電話番号の違い

IP電話では、着信側が通話料を負担するフリーダイヤルが使用できない場合があります。また、IP電話では電話番号から発信元の場所を推定できないため、警察署や消防署に緊急通報する場合は注意が必要です。

企業において固定電話機を廃止するメリット

近年、リモートワークの導入などの理由から、オフィス内の固定電話機を廃止する企業も増加傾向にあり、固定電話を廃止する代わりに従業員にスマートフォンを貸与する企業もあります。なお、スマートフォンを貸与する際は、クラウドPBXなどのインターネット回線を利用したオフィス向け電話回線サービスを導入することも検討してください。

企業で固定電話機を廃止するメリットとしては、次のような点が挙げられます。

場所を問わずに仕事の電話が受けられる

従業員それぞれにスマートフォンを貸与することで、リモートワークを実施している企業においても、顧客や従業員同士でスムーズに連絡が取れます。固定電話機を廃止しスマートフォンを活用することで、従業員にとっても場所にとらわれない柔軟な働き方の実現が期待できるといえます。

電話対応のために出社する必要がなくなる

オフィスに固定電話機を設置している場合、顧客からの連絡や営業電話などさまざまな電話を受ける必要があるため、リモートワークを実施していても電話対応のために出社勤務しなければならない従業員がいるという企業も見受けられます。

固定電話を廃止し、従業員一人ひとりにスマートフォンを貸与することで、外部からの電話も直接担当者につながるため、電話応対のためだけに出社する必要がなくなり、電話を取り次ぐ作業もなくなります。

通話料や維持にかかる費用を削減できる

クラウドPBXなど、インターネット回線を利用した電話サービスへ移行することで、通話料や維持管理費などのランニングコストを固定電話の利用時より抑えられる場合があります。前述のとおり、固定電話では発信者と受信者の距離により通話料が異なるため、インターネット回線を利用した電話サービスに移行することで通話料が一律になり、コストの削減が期待できます。なお、2024年1月1日以降、固定電話は自動的にIP電話に切り替わり、通話料は一律になります。

働きやすいオフィスにできる

固定電話を廃止することによって、オフィス内のフリーアドレス化やリモートワークの促進など柔軟な働き方を実現でき、従業員一人ひとりの生産性や従業員満足度の向上にもつながります。

企業において固定電話機を廃止する場合の注意点

企業において固定電話機を廃止し、サービスを解約する際にはいくつか注意点があります。

代表電話番号が廃止される

固定電話を解約すると、企業で利用している代表電話番号も使えなくなります。代表電話番号の利用を続けたい場合は、クラウドPBXを導入しインターネット回線に切り替えることで解決します。代表電話番号を維持したまま電話機を撤廃したい場合は、クラウドPBXの導入がお勧めです。

企業の社会的信用が下がる

固定電話の廃止とともに代表電話番号をなくし、電話による連絡手段を従業員一人ひとりの携帯電話番号のみとする場合は注意が必要です。

顧客によっては、代表電話番号がなく携帯電話番号のみを提示している企業に対して、不信感を抱く可能性があります。代表電話番号がないことで企業だけでなく自社のサービス、商品への信用度の低下につながることもあるのでご注意ください。

法人登記や口座開設が難しくなる

法人登記は携帯電話番号でも申請できますが、後から変更できません。企業の規模にかかわらず、申請の際には特に注意が必要です。また、口座を開設する際も、携帯電話番号のみでは審査において不利になる可能性があります。代表電話番号がないことによって不利になる場面を理解しておくことが重要です。

まと

この記事では、固定電話が廃止される理由や、IP電話に切り替わったことで起きる変化についてご紹介しました。固定電話の廃止により通話料の削減などは期待できますが、企業においては注意しなければならない事柄も複数あります。固定電話の使用目的を整理し、適切なサービスへの契約をご検討ください。