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Sky株式会社

連載企画
集めた名刺・顧客データはしっかり生かす! 初めてのコンテンツマーケティング 第3回
売り込まないアプローチ
リサーチとレポートを活用したナーチャリング

著者:競 仁志

売り込まないアプローチ<br>リサーチとレポートを活用したナーチャリング
競  仁志 氏

株式会社IDEATECH 専務取締役

競 仁志 氏

2013年株式会社ネットプロテクションズへ入社。その後自身で会社を創業。2020年より株式会社IDEATECHの取締役へと就任。リサーチマーケティング「リサピー®」事業の立ち上げ・推進の責任者となる。10以上の商品を開発。BtoB領域のPR・マーケティング・セールスを「コンテンツ」で統合し、売上向上を実現するコンテンツマーケティング・コンテンツセールス・コンテンツPRの支援を実施。
https://ideatech.jp/

SKYPCE コラムサイト編集部

SKYPCE コラムサイト編集部は、名刺管理をベースにした営業やマーケティングの施策のほか、営業DXや業務効率化などの各種取り組みに役立つ情報を発信しています。
「SKYPCE」を開発・販売するSky株式会社には、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、ソリューションアーキテクト、JDLA Deep Learning for GENERAL / ENGINEERなどの資格取得者が多数在籍しています。それらの知見をもとに、名刺の管理効率化だけではなく、より戦略的に活用範囲を広げた「名刺によるDXの実現」を目指しています。

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名刺データの大半は「今すぐ買わない人」。
その多数派との関係を絶やさない
マーケティングが大事

前回(第2回)は、コンテンツマーケティングの最初の第一歩として「事例」を作ることをお勧めしました。すでに買う気のある顕在層に効き、休眠していた名刺データを動かすきっかけにもなる。そういうお話でした。

ただ、事例が効くのは、あくまで「今、買おうとしている人」に対してです。皆さんの手元にある名刺データの大半は、そうではありません。「いつか検討するかもしれないが、今ではない」。この層の方が、実際にはずっと多いはずです。

今回は、この「今すぐは買わない大多数」との関係を、どう続けていくかというお話です。キーワードは「ナーチャリング」。有益な情報を継続的に届けて、自社への関心を保ち、育てていく考え方です。そして、その中心に据えることで有効に働くのが「リサーチとレポート」です。

買い手は営業担当者と話す前に、もう調べ終えている

なぜ、売り込まずに情報を届け続ける必要があるのか。まずは、今のBtoBにおける買い手がどう動いているかを、データで確認します。

当社IDEATECHが2026年に実施した、BtoBの大型購買に関する調査があります【図1】。ここでわかったのは、買い手が営業担当者と話すよりずっと前から、自分たちだけで検討を進めているという事実です。

検討期間が6か月以上に及ぶ案件は、全体の約4割ありました。さらに、営業やベンダーと本格的にやりとりを始める前の時点で、「解決すべき課題」の整理がおおむね進んでいた人が52.8%。半数を超える買い手が、営業担当者と話す前に課題をほぼ整理し終えているわけです。

これは、多くの中小企業にとっても他人事ではありません。買い手は、営業に会う前の長い期間、自社で情報を集め、比較し、方向性を固めています。その期間に自社の情報が買い手の視野に入っていなければ、そもそも候補にすら挙がりません。

「事例」で一度接点を取り戻せても、そこで発信を止めれば、また忘れられてしまいます。営業が動き出すより前の長い検討期間に、有益な情報で接点を保ち続ける。これがナーチャリングを行う理由です。

ナーチャリングとは、「売り込まない接触」を続けること

ナーチャリングというと難しく聞こえますが、やることはシンプルです。相手の仕事に役立つ情報を、「売り込み」抜きで定期的に届ける。それだけです。

ここで大事なのは、「売り込まない」という一点です。今すぐ買う気のない相手に「導入しませんか」と連絡すれば、警戒されて離れていきます。一方、「御社の業界で、こんなデータが出ました」という連絡なら、相手は身構えません。役に立つ情報をくれる相手として、少しずつ信頼が積み上がっていきます。

営業でもなく、広告でもない。相手の役に立つことで、関心の火を絶やさない。この積み重ねが、いざ検討が始まったときに「まずはあの会社に聞いてみよう」と思ってもらえることにつながります。

その役割を担うものとして最適なのが「リサーチとレポート」です。当社でも「白書」というかたちでコンテンツの提供を行っています。

なぜ「リサーチとレポート」なのか

役立つ情報にもいろいろありますが、その中で私がリサーチ(調査)とレポートを軸に据えるのには、はっきりとした理由があります。

1つ目の理由は「データは相手が判断材料に使える」からです。自社の主観ではなく、集めた客観的な事実として示すため、読み手は内容を評価しやすい。前回お伝えしたように、BtoBの資料は本人だけでなく、上司や決裁者にも転送されます。数字の入ったレポートは、それら社内説明の材料として、そのまま使ってもらえます。

2つ目の理由は「資料が実際に選定を動かしている」からです。当社が実施した調査では、候補企業をリストアップする際に参考にした情報源として「ベンダーが発行するホワイトペーパー・資料」が41.0%、さらに【図2】のように選定に最も影響した情報源としても、ホワイトペーパー・資料が20.3%で上位に挙がりました。

そして3つ目の理由は「汎用的な情報では差別化できない」からです。候補選定の決め手に「自社の業界・業種に特化した情報」を挙げた人は6割を超えました。どこかで見た一般論ではなく、自分たちの業界・顧客に向けた事実を出せるかどうか。ここで差がつきます。リサーチは、その「自分たちならではの事実」を作り出す手段です。

届ける先は、皆さんの「名刺データ」

リサーチとレポートを作っても、届ける相手がいなければ成果になりません。その届け先こそが、皆さんの手元にある名刺データ、つまりハウスリストです。

イベントや商談で集めたまま眠っている名刺は、ナーチャリングの配信先そのものです。まずは、その名刺が「使える状態」になっていることが前提になります。紙のまま引き出しにしまっていては動かせません。最近の名刺管理ツールでは、AI-OCRで名刺を高精度にデータ化し、登録した名刺データを社名がうろ覚えでも読み仮名や略称からあいまい検索ができるようになっています。過去の接点を、業界や規模でたどることができる状態にしておく。ここが出発点です。

さらに、届ける工程そのものにもAIが活用されていきます。相手の商談履歴や人物情報をAIが要約したり、送付するメールの下書きをAIが作ったりといった機能も、名刺管理ツールで検討・実装が進んでいます。ナーチャリングは続けることが前提なので、一通ずつの手間をどれだけ軽くできるかが、継続できるかどうかを左右します。マーケティングのワークフローの中でAIが効くのは、コンテンツを「作る」段階よりも、むしろこの「届ける・続ける」段階です。

作ったレポートは、AIにも読まれる資産になる

もう一つ、今の時代ならではの効き方があります。作ったリサーチとレポートは、人だけでなく、AIにも読まれるという点です。

買い手は、検索エンジンにキーワードを打ち込むだけでなく、対話型の生成AIに「○○の分野でお薦めは」と相談するようになってきました。そのときAIが引用するのは、根拠のある1次データ、つまり実際に行われた調査です。

自社で行ったリサーチは、名刺リストへのナーチャリングの材料であると同時に、AIに引用される1次データにもなります。一度作れば、目の前の見込み客と、その先で相談を受けるAIの両方に効く。この二重の効き方が、今リサーチとレポートを薦めるもう一つの理由です。

ナーチャリングは、続けられる設計がすべて

ナーチャリングのためのコンテンツは、一度展開して終わりでは育ちません。本当に効くのは、継続したときだけです。

とはいえ、毎回ゼロから調査を企画するのは負担が大きく、続きません。だからこそ、1つの調査を複数のかたちに展開して、数を稼ぐ発想が要ります。1つの調査データから、プレスリリース、コラム記事、ホワイトペーパー、営業資料と、かたちを変えて何度も届ける。作る負担を分散させながら、接触の回数を保つことが大切です。

次回(第4回)は、この「リサーチとレポート」を実際にどう企画し、どう作っていくのかを具体的な手順に落として解説します。今回の「なぜやるか」を、「どうやるか」に変えていきます。

(「SKYPCE NEWS Vol.26」 2026年9月掲載)