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連載企画
集めた名刺・顧客データはしっかり生かす! 初めてのコンテンツマーケティング 第2回
顕在層からアプローチする――コツのいらない事例マーケティング

著者:競 仁志

顕在層からアプローチする――コツのいらない事例マーケティング
競  仁志 氏

株式会社IDEATECH 専務取締役

競 仁志 氏

2013年株式会社ネットプロテクションズへ入社。その後自身で会社を創業。2020年より株式会社IDEATECHの取締役へと就任。リサーチマーケティング「リサピー®」事業の立ち上げ・推進の責任者となる。10以上の商品を開発。BtoB領域のPR・マーケティング・セールスを「コンテンツ」で統合し、売上向上を実現するコンテンツマーケティング・コンテンツセールス・コンテンツPRの支援を実施。
https://ideatech.jp/

SKYPCE コラムサイト編集部

SKYPCE コラムサイト編集部は、名刺管理をベースにした営業やマーケティングの施策のほか、営業DXや業務効率化などの各種取り組みに役立つ情報を発信しています。
「SKYPCE」を開発・販売するSky株式会社には、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、ソリューションアーキテクト、JDLA Deep Learning for GENERAL / ENGINEERなどの資格取得者が多数在籍しています。それらの知見をもとに、名刺の管理効率化だけではなく、より戦略的に活用範囲を広げた「名刺によるDXの実現」を目指しています。

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前回はコンテンツマーケティングの第一歩として、「自分たちの顧客は誰なのか」を言葉にする話をお伝えしました。「あの人だ!」と顔が浮かぶところまで、顧客像の解像度を上げるアプローチです。

そこから先、いざコンテンツを作ろうとなったときに「最初の1本は何にすべきか」という問いに必ずぶつかります。そして、これに対する私の答えは「事例」です。むしろ、最初は事例から始めるのが一番成果につながると考えています。

ゼロから企画する必要はありませんし、文章力もそこまで要りません。素材は、皆さんの会社の中にすでにあります。今おつき合いのあるお客様、過去に名刺交換した方々の中に、事例にできる素材は眠っています。

「自社向けではない」と感じた瞬間9割の読み手は離脱している

最初に、調査データを共有させてください図1

当社IDEATECHが2026年4月に実施した調査では、資料に対して「自社の企業規模に合っていない」と感じて途中で読むのをやめた経験がある人が、中小企業で92.7%、大企業で87.1%に上りました。

コンテンツの中身が評価される前に、9割近くの読み手が「これ、うちの話じゃないな」と判断し、離脱しているわけです。これは、コンテンツマーケティングに取り組む上で念頭に置いておきたい前提です。どれだけ中身を磨いても、最初の数行で「自社向けではない」と思われた瞬間、最後まで読んでもらうことはできません。

そして、この壁を最も自然に越えられるのが「事例」というコンテンツです。

「○○業界の○○社(従業員数○○人規模)の事例です」と冒頭に書いた瞬間、読み手は「これは自分の会社の話だ」と感じてくれる。事例には、そのような力があります。

顕在層が、意思決定の直前に必ず探すもの

そもそも事例とは、すでに購買意欲がある「顕在層」が、意思決定の直前に必ず探すコンテンツです。

「この商品、良さそうだな」と思った後、ほとんどの担当者が次にやることは「うちと似た会社が、これを導入してうまくいっているのか」を確認することです。BtoBでは商品の機能や価格よりも、似た状況の他社が成功しているという事実の方が、最後の一押しになる場面が多くあります。

つまり事例は、見込み顧客が「一番手前で読む」ものというより「一番奥で読む」コンテンツです。だからこそ、ここに適切なものを据えられるかどうかが契約に直結します。

ここまで聞くと「うちには立派な事例なんてない」と感じる方もいるかもしれませんが、心配は要りません。事例マーケティングに必要なのは、派手な成功ストーリーでも、キャッチーな見せ方でもありません。凝れば凝るほど、事例はうそくさくなります。読まれる事例は、徹底して「素直」なものです。

事例化する顧客は「業界×規模×役職」の3軸で選ぶ

では、誰の事例を作ればいいのでしょうか。

それは前回も描いた「あの人」に最も近い既存顧客を選ぶこと。これが原則です。そして「近い」を判断するときに私が使っているのが「業界×規模×役職」の3軸です。

先ほどの調査でも、事例にミスマッチを感じた要因として、中小企業では「導入に必要な人員や体制が自社の規模に見合わなかった」が58.3%、大企業では「掲載されている事例の企業規模が自社と大きく異なっていた」が57.4%でした図2。同業かどうかだけでなく、同規模かどうかが、大きな離脱要因になっていることがわかります。

「自社と同じ、製造業の事例です」だけではまだ足りません。「同じ製造業で、従業員数300人規模で、現場の改善を担当している課長クラスが語った事例です」と書けてはじめて、読み手は「自分の話だ」と感じてくれます。

ここで生きてくるのが、皆さんの手元にある名刺データです。例えば5,000枚の名刺があれば、「業界×規模×役職」で絞り込むだけで、事例化する候補は自然と浮かび上がってきます。最近では、AIを活用して読み仮名や略称からあいまい検索ができる名刺管理ツールも出てきており、社名がうろ覚えのままでも過去の接点をたどっていける環境も整ってきました。

「みんなに当てはまる事例」ほど、実際は誰にも刺さりません。特定の一人を強く想定して絞り込む方が、結果としてたくさんの人に届く事例になります。

誰でも書ける、事例の「4つの型」

候補が決まったら、次は中身です。事例にはシンプルな「型」があります。私はいつも、次の4つの型を順番に並べることを推奨しています図3

この4つを順番に並べる。それだけで、事例は記事として成立します。文章がうまいかどうかより、順番の方がずっと大事だと私は考えています。また、この際に一つだけ意識していただきたいことがあります。それは、読み手の規模によって、4つのうち厚くするべき部分が変わるという点です。

中小企業が事例で見ているのは、「少人数でも運用できるのか」「費用感は現実的か」です。中小企業向けの事例なら「②課題」と「③解決のプロセス」の中で、どんな体制で、どれくらいのコストで導入したかを厚めに書く。

一方で大企業が見ているのは、「同規模の会社で成果が再現するか」「社内で説明できる根拠があるか」です。大企業向けの事例なら、「④結果」のところで数値の再現性や、稟議をどう通したかまで踏み込んでいく。

同じ4つの型を使っていても、配分を変えるだけで読み手に対する響き方は大きく変わってきます。

取材で必ず聞く「5つの問い」

事例の質を決めるのは、書く力よりも、聞く力だと考えています。私が事例取材のときに必ず聞いている問いを、5つご紹介します図4

この5つに対する答えを、できるだけ生の言葉のまま残しておいてください。プロっぽく整えようとした瞬間に事例からリアリティーが抜け、「響かない」ものになります。「正直に言うと、もう人が辞めてしまうのが怖くてしょうがなかった」という例は極端ですが、こうした整っていない言葉の方が、実は読み手の心を動かす要素があります。

ただし、あまり極端な表現は避けるべきで、バランスが重要です。

事例は「読み手の、その先」まで届くように作る

もうひとつ大事なデータをご紹介します図5。この調査では、企業規模別のデータが意思決定の参考になる理由として、「稟議資料として説得力が増すから」が、中小企業で69.6%、大企業で69.8%と、いずれもトップになりました。

事例は、読者一人で消費されて終わるものではないとわかります。読者は、社内でほかの誰かにも転送する前提で読んでいる。これは、事例作りに大きく影響します。ですから、事例は「届ける」だけでは足りません。社内にそのまま転送してもらえるかたちであることが大切です。

具体的に意識したいのは、PDFのタイトル、最初のページの見出し、冒頭の第1段落。ここを見ただけで、上司や部長・役員が「これは検討する価値があるな」と思える状態になっているかどうかです。

伝言ゲームで内容が劣化しないように、ひと目で「同業界・同規模・同じ課題」が伝わる構造を目指す。事例は、読み手のさらに先にいる人にまで届く前提で作っていきます。

3つの場面で事例を使い倒す

事例は作って終わりではありません。むしろ、作ってからが本番です。お勧めしている使い道は、3つあります。

1つ目はダウンロード資料として活用する方法。前回触れた「個人情報と引き換えにしてでも欲しい」を満たす王道のコンテンツです。2つ目は商談時の補助資料で、口頭の説明だけよりも資料を一緒に渡せると説得力が一段上がります。

そして3つ目が、休眠顧客への再アプローチの口実に使うことです。実はこれが一番効きます。過去に名刺交換をしたまま接点が途絶えてしまった方々には、久しぶりに連絡を取ろうとしても、用件がなければ難しいでしょう。そこで「同じ業界・規模の事例ができたので、ご参考までにお送りします」と言える状態をつくっておく。これは、ハウスリストに再びアプローチする上で、これ以上ない大義名分になります。

このような事例が10本そろえば、過去の名刺データ全体に対し、業界・規模別での連絡の口実が手に入ります。休眠顧客のリストが再び動き出すきっかけになります。

コンテンツマーケティングは「事例10本」で立ち上がる

前回「質の高いコンテンツを10~15本作ろう」とお伝えしましたが、まずは事例10本でいきましょう。

「業界×規模×役職」で絞った既存顧客の中からまず1社。4つの型に沿って、「5つの問い」を聞き、生の言葉のまま事例にしていく。これを10回繰り返すだけで、コンテンツマーケティングの土台はしっかりと固まっていきます。

前回ご紹介した「顧客解像度」と、今回の「事例」。この2つがそろうだけで、皆さんのコンテンツマーケティングは、ほかの多くの中小企業よりもずいぶん先に進んだ状態になっていると思います。

次回の第3回では、事例で接点を取り戻した後に、その関係を継続的に育てるための「ナーチャリング」についてお伝えします。リサーチとレポートという、地味ながら大きな効果を持つコンテンツの話となります。

(「SKYPCE NEWS Vol.25」 2026年7月掲載)