
人事異動などに伴い、着任のあいさつメールを送る機会はしばしばありますが、どのように書けばよいかを悩むことも少なくありません。この記事では、着任のあいさつメールを書く上で気をつけたいポイント、上司や同僚、部下など送る相手に応じた例文などをご紹介します。着任のあいさつメールを書く際の参考にしてください。
着任のあいさつメールの重要性
着任のあいさつメールは、ビジネスメールの中でも特に丁寧に書きたいメールの一つです。ここでは、着任のあいさつメールの重要性をご紹介します。
第一印象を左右する
着任のあいさつメールは、メールを送る側の第一印象に大きく関わります。第一印象をよりよくすることは、その後の働きやすさやほかの従業員とのコミュニケーションの取りやすさにも影響します。着任のあいさつメールを送る際は、できるだけ好印象が与えられるように、内容や送るタイミングを意識することが大切です。
社内のコミュニケーションが円滑になる
部署を異動するときは直接あいさつに伺う前に、着任のあいさつとしてメールを送っておくと異動先の部署の方たちにも親切です。社内でのコミュニケーションや異動後の業務を円滑に進めるためにも、異動の際は前もってメールを1通送ることをお勧めします。
引き継ぎ業務をスムーズに開始できる
異動にあたって、事前に着任のあいさつメールを送っておくことは、異動先の業務に関するコミュニケーションの起点にもなります。異動先での業務の引き継ぎや準備もスムーズに進められるので、異動時にはあらかじめ着任のあいさつメールを送る方がメリットも大きいといえます。
着任のあいさつメールと新任・就任のあいさつメールの違い
「着任」「新任」「就任」は、それぞれ次のような意味があります。
- 着任・・・新しい職務に就き、任地に到着すること
- 新任・・・(昇格・降格問わず)新しい職務に就くこと
- 就任・・・(昇格によって)新しい職務に就くこと
それぞれ新しい職務に就くということに違いはありませんが、「着任」には職務を行うための場所へ赴くという意味も込められています。あいさつメールを送る際は、着任、新任、就任の使い分けを意識することが大切です。
着任のあいさつメールを書く際のポイント
着任のあいさつメールを書く際のポイントを解説します。よい第一印象を抱いてもらうためにも、ポイントを押さえておくことが大切です。
わかりやすい件名にする
着任のあいさつメールを送る際は、本文だけでなく件名にも重要な役割があります。ひと目で着任のあいさつメールだと判断できる件名にすることで、メールを受け取った相手もすぐに用件がわかります。
例えば、件名を「着任のごあいさつ」といったように短く簡潔に示すことで、メーラーの件名表示部分の大きさによって表示が途切れてしまうことが少なくなり、内容が伝わりやすくなります。
メールの構成要素(あいさつ・自己紹介・今後の抱負)を含める
着任のあいさつメールは、次のような構成で書くのが一般的です。
- あいさつ
- 自己紹介
- 今後の抱負
上記の3点を必ずメールに含み、かつ自己紹介や抱負には自分らしさがアピールできるような内容を記述すると、よりよいメールが作成できます。
マナーを守った丁寧な文面にする
着任のあいさつメールは、相手に対して失礼に当たらない内容となるよう注意して書き進めることが重要です。マナーを意識した丁寧な文面でメールを送ることで、異動先の部署の人たちに誠意を、異動前の部署の人たちには謝意を伝えることができます。
一方で、定型文をそのまま使用するなど形式ばった文章では、堅苦しい印象を抱かれてしまう可能性があります。なるべく自分の言葉で表現するよう心掛けることもポイントです。
適切なタイミングでメールを送る
着任のあいさつメールは、一般的には次のようなタイミングで送ることが多いです。
異動先の部署にメールを送る場合
- 上司、社内の関係者・・・人事異動の辞令が発令された当日中
- 取引先、社外の関係者・・・着任後、数日以内
異動前の部署にメールを送る場合
- 上司、社内の関係者・・・着任日の当日中
- 取引先、社外の関係者・・・着任後、数日以内
異動前の職場の方々には、着任日に無事着任したという報告とともに、お世話になったことへの感謝の気持ちを伝えることが大切です。なお、異動後の直属の上司には、メールに加えて電話でもあいさつをしておくことでよりよい印象を与えられます。
着任のあいさつメールの例文(社内)
ここでは、着任のあいさつメールを社内に向けて送る際の例文をご紹介します。上司、同僚、部下など、宛先となる相手との関係ごとに例文を掲載するので、ぜひ参考にしてください。
上司に送るメールの例文
件名:着任のごあいさつ
本文:
◯◯支社
◯◯部
課長 ◯◯◯◯様
このたび、人事異動により◯月◯日付で着任いたします、◯◯◯◯と申します。
異動前は、△△支社△△部において2年間、市場調査や新規商品のコンセプト立案に励んでおりました。
新しい職場での業務に慣れるまで、ご迷惑をお掛けするかと存じますが、◯◯様をはじめとした皆さまのお力になれるよう精進してまいります。ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
メールにて恐縮ではございますが、取り急ぎ◯◯支社への着任のごあいさつを申し上げます。
着任先の上司へあいさつメールを送る際は、特に言葉遣いや記述ミスに注意する必要があります。宛名に記載する部署名や役職名は省略せず、名前もフルネームで書くとより丁寧な書き方になります。
同僚に送るメールの例文
件名:着任のごあいさつ
本文:
◯◯支社
◯◯部 各位
このたび、人事異動により◯月◯日付で着任いたします、◯◯◯◯と申します。
異動前は、△△支社△△部において2年間、市場調査や新規商品のコンセプト立案に励んでおりました。
◯◯支社での業務は初めてで、何かとご迷惑をお掛けするかと存じます。いち早く◯◯部での戦力となれるよう、より一層の努力を重ねてまいりますので、ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
メールにて恐縮ではございますが、取り急ぎ◯◯支社への着任のごあいさつを申し上げます。
同僚は、業務を進める上で頻繁にコミュニケーションを取る存在です。あいさつのメールで失礼な態度を取ってしまい心証を害すると、仕事をするなかでも不都合が生じてしまいかねません。「これからお世話になる」という謙虚な姿勢が感じられるような文面にすることが大切です。
また、複数名にメールを送る際には、宛名の敬称として「各位」が使えます。「各位」は複数の相手に対し、その一人ひとりに敬意を示すもので、メールを一斉送信する際によく用いられます。
部下に送るメールの例文
件名:着任のごあいさつ
本文:
◯◯支社
◯◯部
◯◯◯◯さん
このたび、人事異動により◯月◯日付で着任いたします、◯◯◯◯と申します。
異動前は、△△支社△△部において2年間、市場調査や新規商品のコンセプト立案に励んでおりました。
◯◯支社での業務は初めてですが、◯◯さんをはじめとした皆さまから業務内容や意見を伺いながら、皆さまが働きやすく仕事に力を注げる環境づくりに貢献できればと存じます。
メールにて恐れ入りますが、取り急ぎ◯◯支社への着任のごあいさつを申し上げます。
部下への着任のあいさつメールでは、「この人には業務の相談がしやすそうだ」という印象を抱いていただけるよう、表現に気をつけることがポイントです。
もし、着任先の職場で見直したいことや特に注力したいことがあったとしても、いきなり「これから◯◯を見直します」「これからは◯◯を徹底させます」といった発言をすると、部下は身構えてしまうものです。着任のあいさつメールでは、相手を問わず謙虚な姿勢を保つことが大切です。
異動前の部署に送るメールの例文
件名:△△支社着任のごあいさつ
本文:
◯◯支社
◯◯部 各位
お疲れさまです。
このたび、◯月◯日付で△△支社△△部へ無事着任いたしましたのでご報告いたします。
◯◯部に在任中は、大変お世話になりました。
至らぬ点もあったかと存じますが、皆さまにいつも温かくご指導いただいたことで、多くのことを学び成長できました。
◯◯部で学んだことを、新天地でも生かして業務に励みます。
メールでのごあいさつとなり恐縮ではございますが、取り急ぎ着任のごあいさつと在任中のお礼を申し上げます。
また皆さまと共にお仕事に取り組める日を楽しみにしております。
異動前の部署に送るメールでは、無事に新しい職場へ着任したことの報告と、元の部署に対する感謝の2点を記述します。
引き継ぎや身の回りの整理など、最終出勤日まではやることが多く、全員に直接あいさつができないケースも少なくありません。自分が所属していた部署への最後のあいさつとして、丁寧に感謝の気持ちを込めたメールを送ることをお勧めします。
着任のあいさつメールの例文(社外・取引先)
社外の関係者や取引先に着任のあいさつメールを送る際の例文をご紹介します。
異動前の取引先に送るメールの例文
件名:◯◯支社着任のごあいさつ
本文:
株式会社◯◯
◯◯部
◯◯◯◯様
平素より大変お世話になっております。
株式会社△△の◯◯◯◯でございます。
このたび、人事異動により◯月◯日付で、××支社××部から△△支社△△部に着任いたしました。
××部在任中、◯◯様には大変お世話になりました。
また、貴社とのお取り組みの中で私自身も学ぶことが多く、大きな成長につながりました。
新天地では、◯◯様とのお仕事を通じて学んだことを生かし精進してまいります。
◯◯様におかれましてはお忙しいと存じますが、どうかお体に気をつけてお過ごしください。
貴社のますますのご健勝とご発展をお祈り申し上げます。
異動前に所属していた部署での取引先にも、着任のあいさつメールは必要です。メールには、異動のことと着任したこと、これまでお世話になったことへの感謝を記述します。後任の担当者よりも連絡が遅れてしまうと、相手方にも失礼に当たります。着任後はできるだけ早くあいさつのメールを送ることが大切です。
異動後の取引先に送るメールの例文
件名:着任のごあいさつ【株式会社◯◯・(名前フルネーム)】
本文:
株式会社◯◯
◯◯部
◯◯◯◯様
お忙しいところ、突然のご連絡をご容赦ください。
株式会社△△の◯◯◯◯と申します。
このたび、◯月◯日付で弊社◯◯の後任として着任いたしました。
これから貴社のお力になれるよう精いっぱい努めてまいります。
本来であれば直接お伺いし、ごあいさつさせていただくべきところですが、取り急ぎメールにて着任のごあいさつを申し上げます。
後日、あらためてごあいさつのお時間を頂戴できればと存じます。
つきましては、下記の日程でご都合のよろしい日時をご連絡いただけますでしょうか。
◯月◯日(◯)××時~××時
◯月◯日(◯)××時~××時
◯月◯日(◯)××時~××時
ご多忙の折、大変恐れ入りますがご検討いただけますと幸いでございます。
今後とも、何とぞよろしくお願い申し上げます。
異動後に所属する部署での取引先にメールを送る場合は、あいさつメールでこちらからコンタクトを取る前に、相手からの入電などで先にコミュニケーションが発生するのを避けるためにも、着任後なるべく早く送信することが大切です。また、メールであいさつをした後に直接取引先へあいさつに伺う場合は、メールの文中に日程の候補も記述することでスムーズにスケジュールが調整できるようになります。
着任のあいさつメールの注意点
着任のあいさつメールを送る際に注意が必要なポイントをご紹介します。
長文にならないようにする
着任のあいさつメールを送る際は、必ずしも長文を書く必要はありません。これまでの思い出や感謝の気持ちを述べることで熱意は伝わりますが、文章が長いということは、それだけ相手に読むための時間を使わせることになります。要点を絞った簡潔な文章の中で、相手に響くメールになるよう心掛けることが大切です。
ネガティブな要素を含まない
着任のあいさつメールを送る際は、異動前、異動後の部署を問わず相手にネガティブな印象を与える内容を避けることが重要です。
「異動前の部署でやり残したことがある」「もっと異動前の部署にいたかった」といった内容では、異動先の方たちによくない印象を抱かせてしまいます。着任のあいさつメールでは、異動前の部署の人たちには感謝の気持ちを、異動後の部署の人たちには業務への意気込みなどを伝えることを心掛け、ポジティブな内容を意識することが大切です。
送信先はあらかじめ上司に確認してもらう
着任のあいさつメールを送る際には、宛先に含める方のメールアドレスを、上司に一度確認してもらうことで、送信漏れや宛先の間違いを防げます。
本来は着任のあいさつメールを送るはずだった方に送り損ねてしまうと、相手に「担当が代わったのに、後任者からあいさつされていない」と悪い印象を抱かれてしまう可能性があります。社内の関係者や取引先など、宛先に含める人数が多い場合は、特に不備がないか事前チェックを念入りに行う必要があります。
着任のあいさつメールに関するよくある質問
着任のあいさつメールを送る際に、よくある疑問についてご紹介します。
着任のあいさつで職場を訪れる際に手土産は必要?
メールに関することではありませんが、よく耳にする疑問です。着任のあいさつで新しい職場を訪れる際に手土産を持参することは、事前の着任のあいさつメールと同様に、よりよい印象を抱いてもらう機会となるので、無理のない範囲で用意することをお勧めします。
手土産は、職場で食べやすいような個包装のもので日持ちする菓子折りを選ぶようにします。なお、予算は異動先の部署の人数にもよりますが、3,000~5,000円程度が相場です。
着任のあいさつメールを受け取った場合、返信は必要?
もし、着任のあいさつメールを受け取ったときは、なるべく早く返信することがマナーです。なお、返信のメールには次のような内容を記述すると親切です。
- 着任のあいさつメールを送ってくださったことへのお礼
- 在任中にお世話になったことへの感謝(送り出し側)
- 異動先の部署での業務を励ます言葉(送り出し側)
- 新しい仲間を迎えることへの喜び(受け入れ側)
異動したからといって、異動前の部署の方々との接点が完全になくなるとは限りません。これまでお世話になった方や、今後仲間として共に働く方への礼儀として丁寧な対応を心掛けることが大切です。
まとめ
この記事では、着任のあいさつメールの書き方や例文、マナーについてご紹介しました。
人事異動の前後は、業務の引き継ぎや準備、各所への連絡など対応することが多く、つい焦りがちです。しかし着任のあいさつメールは、第一印象を左右したり、相手とのコミュニケーションのきっかけになり得ます。丁寧さに欠ける文章になることがないよう、慎重にメールを作成するために、本記事を参考にしていただけましたら幸いです。