顧客管理や営業DX・業務効率化など、企業の営業活動やマーケティング活動に役立つ情報を随時掲載しています。

Sky株式会社

公開日2026.02.26

現役弁護士が解説! 名刺と法令の旬トピ ー第4回ー名刺にはどのような内容を記載することが許される?

著者:Sky株式会社

名刺にはどのような内容を記載することが許される?

「SKYPCE」をはじめとする名刺管理サービスを使用する上で、法令の観点から留意しておきたいポイントが多々あります。このコーナーでは、名刺情報や名刺管理サービスにまつわる最新情報について、法律のプロである現役弁護士に解説いただきます。今回は、名刺に実際の名前とは異なる名称を記載することや、実際に所属する会社とは異なる会社の名刺を支給することが、法的にどのような問題を持ち得るのかについて解説します。

岡田 淳

森・濱田松本法律事務所 外国法共同事業パートナー弁護士

岡田 淳

東京大学法学部卒業、ハーバード大学ロースクール修了。内閣府「AI戦略会議」構成員、同「AI時代の知的財産権検討会」委員、個人情報保護委員会「個人情報保護政策に関する懇談会」会員、「東京都AI戦略会議」委員などを歴任。主な業務分野として、テクノロジー、知的財産権、個人情報およびサイバーセキュリティ等の案件を手掛ける。

松井 佑樹

森・濱田松本法律事務所外国法共同事業アソシエイト弁護士

松井 佑樹

慶應義塾大学法学部法律学科卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。慶應義塾大学大学院 法学研究科 研究員(非常勤)。知的財産のほか、J-REIT / 投資信託に関する業務に携わる。著書『改訂版 ビジネス法体系 知的財産法』(共著、第一法規出版、2025年)ほか。

ケース1


医療機器メーカーA社に営業職として勤務するBさんは、副業としての名称でSNSのインフルエンサーとしても活動しています。Bさんは、自身のSNSの認知向上などを目的に、A社から支給される名刺の名前をにしたいと考え、A社に相談をしました。これは問題があるでしょうか。

名刺でのビジネスネームの使用について

業務の場面におけるビジネスネーム(業務上の通称)の使用は、プライバシーへの配慮や多様な働き方の観点から導入が広がっています。日本では、古くから芸能・文学の世界を中心に、いわゆる「芸名」や「ペンネーム」がビジネスネームとして使用されてきました。近時では、SNSのインフルエンサーも実際の名前とは異なるビジネスネームを使用することが一般的です。また、カスタマーハラスメント防止や個人特定を回避する目的で、市庁舎で勤務する職員の名札について、ビジネスネームの使用を認める自治体も見られるようになりました※1

名刺にビジネスネームを用いること自体は、ただちに法律に違反するものではありません※2。ただし、取引先に対して、名前や所属の同一性について混乱を生じさせないように配慮することが不可欠です。

特に、個人で事業を営む場合、契約書の当事者欄にビジネスネーム等の通称名を記載することは、契約書の当事者に疑義を生じさせる可能性があります。そのため、本名と通称名を併記し、同一性を明確にするなどの手当てをすることが実務上よく見られます。

また、多くの会社では、名刺の様式や肩書の付与、ロゴ・表記の範囲等を定めた社内ルールが存在します。A社から支給される名刺にビジネスネームの掲載を希望するBさんの場合も、A社の定める社内ルールに従って、A社にビジネスネーム掲載の申請・承認を経ることが必要となります。

ケース2


事務用品メーカーC社は、営業戦略の見直しを行い、取引先との関係構築・強化のため、営業活動のコンサルティングやサポートを行うD社と業務委託契約を締結しました。C社がD社に対して委託する業務の中には、D社の従業員がC社の営業活動を行うことも含まれており、C社はD社の従業員がC社の営業活動を対外的に行う際には、C社の従業員と同一の名刺を支給したいと考えています。このような行為は法的に問題になるのでしょうか。

業務委託先の従業員への自社の名刺の支給について

業務委託先の従業員をはじめ、自社に所属しない者に対して、自社名入りの名刺を支給することは、ビジネスネームの使用と同様に、それ自体がただちに法律に違反するものとはなりません。しかし、このような名刺を支給する行為は、自社の従業員ではない他人に「自己の商号を使用して事業又は営業を行うこと」を許諾した行為と判断される可能性があります。このような場合、名刺を支給した会社は、当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負います(会社法第9条、商法第14条)。このような責任は「名板貸し責任」と呼ばれています。

C社の場合、自社に所属しないD社の従業員に、C社の従業員と同一の名刺を持たせ、自社の営業行為をさせることを計画していますが、これは「自己の商号を使用して事業又は営業を行うこと」を許諾しているものと判断される可能性があります。

この場合、C社の社名入りの名刺を持ったD社の従業員が、C社の従業員であると偽って、C社に無断で事情を知らないE社と取引を行い、E社が当該取引をC社との取引であると誤認していた場合、C社は名板貸し責任を負い、当該取引によって生じた債務を負担しなければならない可能性があります。

このようなリスクがあることを踏まえ、実務的な対応としては、業務委託先等には自社名入りの名刺の支給を原則として行わず、やむを得ず自社名を記載した名刺を使用させる場合でも、①「D社(委託先)所属 / 外部協力」等の誤認防止表示を明確化し、②委託業務等の終了後速やかに名刺の破棄・返納を義務づけることや、③取引先への説明や社内向けFAQの整備等の取り組みを行うことが良いと考えられます。

【図】D社の従業員にC社の従業員と同一の名刺を支給

(「SKYPCE NEWS Vol.22」 2026年1月掲載)

SKYPCE コラムサイト編集部

SKYPCE コラムサイト編集部は、名刺管理をベースにした営業やマーケティングの施策のほか、営業DXや業務効率化などの各種取り組みに役立つ情報を発信しています。
「SKYPCE」を開発・販売するSky株式会社には、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、ソリューションアーキテクト、JDLA Deep Learning for GENERAL / ENGINEERなどの資格取得者が多数在籍しています。それらの知見をもとに、名刺の管理効率化だけではなく、より戦略的に活用範囲を広げた「名刺によるDXの実現」を目指しています。