
日本商工会議所が2022年に実施したアンケート調査「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況」では、約65%の中小企業が「人手が不足している」と回答しています。日本の慢性的な人手不足の要因には、少子高齢化や働き方の多様化などさまざまなものが挙げられますが、さらに企業を悩ませているのが「業務の属人化」です。業務の属人化とは、いったいどのようなものなのでしょうか? 本記事では、業務の属人化の原因やリスクのほか、属人化を解消する方法などについて解説します。
属人化とは、特定の従業員しかわからない業務があること
属人化とは「業務のブラックボックス化」とも呼ばれ、特定の担当者でないと業務が進められない状態のことを指します。属人化は、知見や経験が個人に集中するため、一見すると業務がスムーズに進められるという側面もあります。しかし、担当者が退職や異動によって担当を離れた途端に、業務の遅延や中断を招くリスクが潜んでいます。
業務の属人化は、以前から企業の中に存在しており、今に始まったことではありません。では、なぜ最近になってクローズアップされるようになったのでしょうか。
その背景の一つに、日本における深刻な人手不足があります。少子高齢化が進む日本では生産年齢人口が年々減少している上、人材の流動性も活発化しているため、企業が人材を補強することが難しくなっています。それに伴い、企業は業務効率化と生産性向上の必要に迫られており、それらの弊害となる業務の属人化が大きな課題となっているのです。
この課題を解決するために、「業務の見える化」「属人化の解消」「業務標準化」といった、業務改善を目指したキーワードが着目されるようになりました。その中でも属人化は、業務品質の低下や人材育成の難しさなど、多くのビジネス課題の要因になり得ます。経営にも影響を及ぼすリスクのため、すでに課題を感じている企業は、早急に属人化の解消に向けた取り組みに着手することが重要です。
属人化が起こる原因
企業での業務において、なぜ属人化が起きてしまうのでしょうか。主な原因としては、次のようなものが挙げられます。
業務の専門性が高い
業務の属人化が起きる原因の一つに、業務の専門性が高いことがあります。例えば、ある特定の業務で専門知識が必要な場合、知識を持つ人物に集中的に任せることで、業務がスムーズに進むことは珍しくありません。しかし、その人物が不在になったときに、ほかに同じ専門知識を持っている人が代行できなければ、最悪の場合は業務がストップしてしまうリスクがあります。
もし、担当者がほかの社員を教育し、知見や経験を共有する仕組みが整っていれば、業務を標準化させることができます。しかし、何も手を打たずに放置していると属人化は自然と進んでしまいます。
テレワークによる情報共有不足
テレワークの普及によって従業員がお互いに業務の情報を共有しにくくなっていることも、属人化の原因だといわれています。テレワークは、社員一人ひとりが離れた場所で勤務するため、コミュニケーションロスが起こりやすく、知見やノウハウを従業員同士で共有する機会が失われ、業務が属人化する傾向があります。
従業員が業務の標準化に消極的
特定の業務を担っている従業員が、職場での自分の地位や存在価値を守るために、業務に関する情報共有や業務の標準化に消極的であることも、属人化の要因になります。仕事にプライドを持ち、任務を完遂しようとする意欲は評価できなくもありませんが、その裏に社内でのポジションの確保や自分独自の仕事のやり方への固執といった自分本位な目的があれば、社内における属人化の問題を引き起こすことは避けられません。
多忙で属人化解消に時間を割けない
属人化の原因の一つが、担当者が多忙で業務の共有ができないことです。特に業務を個人のスキルに依存している場合、属人化の比重が大きくなり、担当者は目の前の業務をこなすことに精一杯になりがちです。そのため、業務の進め方やノウハウなどをチーム内で共有できず、属人化の解消に時間を割けないのです。
また、人手不足によって一人ひとりの業務量が多く、さらに業務内容を共有できる相手がいない状態も、属人化解消に時間を割けないケースだといえます。
属人化によるリスク
業務の属人化は、企業の事業活動に障害を引き起こすリスクがあります。属人化によって企業が影響を受けるリスクの主なものは、次のとおりです。
業務効率や生産性が改善できない
属人化している業務では手順書やマニュアルが存在しないことが多く、担当者のほかに適切な業務の進め方を把握している従業員がいません。そのため、業務の進捗についても客観的な評価ができず、業務効率や生産性を向上させることができません。
人材育成が難しく、サポートができない
業務が属人化すると、担当者の業務内容や進捗状況について上司が判断できず、従業員任せともいえる状態に陥ることが少なくありません。また、社内に知見やノウハウが蓄積されないため人材育成をすることが難しくなり、業務をサポートするもできないため、さらに属人化が進むといった負の連鎖が起きることもしばしばあります。
社員の退職による顧客情報や営業情報の損失
特に営業活動が属人化している状況においては、担当者が退職する際に十分な引き継ぎができていないと、顧客の詳しい情報やそれまでの営業活動の履歴がわからなくなる恐れがあります。それにより直近の営業案件の獲得機会を逃すだけでなく、担当者が蓄積してきた知見やノウハウも失ってしまう可能性あります。
属人化を防ぎ、業務を標準化するメリット
業務の属人化を防ぎ、継続して同じ成果を出せるようにするための施策の一つが、業務の標準化です。業務を標準化することで、企業には次のようなメリットがあります。
業務の効率化やサービス品質の改善につながる
業務を標準化することで進捗管理や評価の基準が明確となり、業務の効率化やサービス品質の改善が進めやすくなるというメリットがあります。属人化による業務のブラックボックス化をなくせば、ほかの従業員も同じ業務に対応できるようになり、一定以上の生産性を維持して業務を進められる環境が構築できます。
業務の知見やノウハウを蓄積・共有できる
属人化していた業務を標準化することで、これまでに蓄積した個人の知見やノウハウを、ほかの従業員にスムーズに継承できます。また、標準化による業務効率の改善が進めば、余裕ができた人的リソースを別部署・別業務に割り当てることも可能になります。
生産性の向上につながる
属人化の解消に直結する業務の標準化は、企業の生産性向上を実現するための施策の一つです。標準化を行うと、仕事の進め方や判断基準が会社のルールとして統一され、担当者ごとに手順のばらつきがなくなります。また、対応業務とリソースの偏りがなくなれば、安定的に高い費用対効果を保つことも可能になります。
従業員の退職時も対応可能
人材の流動化が進んでいる現在の日本では、従業員の離職リスクも考慮する必要があります。従業員の退職時にも業務に支障が出ないようスムーズに業務を引き継ぐためにも、ノウハウの共有や標準化の重要度が増しています。
属人化を解消するための具体的な方法
属人化解消には、業務の内容や進捗をいかに可視化して共有するのかがカギを握ります。社内で業務の属人化解消に取り組む際、具体的には次のポイントを押さえておくことが大切です。
業務の進捗を可視化・共有する
属人化の解消には、まず業務の進捗の可視化と共有が必要です。業務の一連の流れや関係する部署、人物、文書、データといった情報を棚卸してフローチャートにまとめて可視化し、チーム全体で共有することで、ボトルネックになっている業務の洗い出しや分析、改善につなげることができます。
手順書・マニュアルを作成・共有する
業務の標準化を進める際にはわかりやすい業務フローを作り、チーム全体で共有することが大切です。また、誰が業務を行っても品質が保たれるように、タスクを標準化することも重要です。具体的な業務手順やノウハウ、注意点などを共有することによって誰でも同じ流れで業務を行うことが可能になり、組織全体として業務品質の向上が期待できます。
ITツールを活用する
業務が多忙すぎて情報共有に割く時間がない、あるいは情報共有自体が負担だといった場合には、情報共有を促す仕組みとしてITツールを導入することも選択肢の一つです。例えば、名刺をスキャンしてデータ化できる「名刺管理サービス」を使えば、交換したばかり名刺の情報も社内で共有できます。名刺管理サービスによっては、顧客とのやりとりや進捗などを記録する機能を搭載したものもあるので、属人化の解消だけでなく営業活動の効率化を実現することも可能です。
属人化の解消には「名刺管理サービス」の活用が有効
名刺情報は、企業にとって大切な顧客情報の基になるものであり、重要な経営資産です。しかし、その重要性を理解していながらも、その管理は個人に委ねていることも少なくありません。顧客情報の属人的な管理から脱却し、名刺情報を企業の資産として活用するための第一歩として、名刺管理サービスの活用が有効です。
名刺管理サービスは、社内の名刺情報とそれに紐づく営業活動記録などが集約でき、会社全体で共有することができます。個々の担当者が持つ人脈のほか、営業活動の内容や案件の進捗などが可視化されることで、属人化の解消に役立てることも可能です。
営業活動を見える化する名刺管理サービス「SKYPCE」で属人化を解消しよう
名刺データを一元管理・共有することで、「個人」から「組織」での積極活用に転換し、営業活動の活性化をサポートするのが営業支援 名刺管理サービスの「SKYPCE」です。
「SKYPCE」は、社内の名刺情報を集約できることはもちろん、個々の営業活動の記録を蓄積して共有できるなど、営業支援ツールの側面も持っています。また、名刺データを基に取引先の組織図ツリーを自動生成する機能なども提供されており、顧客の部署や担当者を見える化することで、業務の属人化の解消につなげられます。
業務の属人化を防ぎ、さらなるビジネス拡大に取り組む際には、営業活動の効率化にも最適な営業支援 名刺管理サービス「SKYPCE」の導入をご検討ください。
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